中国渡航後の胃腸炎で「不要入院」が急増、医療保険の一時金狙いか
医療保険を悪用した「モラルリスク」が新たな問題として浮上している。中国で入院したとして、医療保険の「入院一時金」を請求するケースが、複数の生命保険会社で急増していることが明らかになった。病名は、入院しなくても治ることが多い胃腸炎が大半を占めており、生保側は一時金を目的とした「不要な入院」が横行していると警戒を強めている。
入院一時金とは何か
入院一時金は、病気やけがで入院した際に、入院日数に関わらず一括で支給される保険商品である。日帰りや短期の入院でも、5万円から30万円ほどがまとめて支払われる仕組みだ。この制度を利用して、海外での入院を装った請求が増加している。
中国での請求が2年で20倍に急増
関係者によると、複数の生保で、契約後1年以内といった短期間で、中国の医療機関に入院したとして一時金を請求する例が顕著に増えている。ある大手生命保険会社では、中国分の請求件数が2024年度は約1万3千件に上り、2022年度の約650件から約20倍に膨らんだ。入院先は特定の複数の医療機関に集中しており、病名は基本的に自宅療養で済む場合が多いとされる胃腸炎が大半を占めていたという。
海外受診でも請求可能な制度の盲点
民間の医療保険は、国内に居住実態があれば、国籍に関わらず原則として契約が可能である。さらに、海外で受診した場合でも、入院証明書があれば一時金を請求できる制度が利用されている。生保関係者は、「春節(旧正月)などの時期に中国へ渡航した後に、胃腸炎を理由に入院し、一時金を請求するケースが目立つ」と指摘している。
生保側の対応と今後の課題
生命保険会社側は、このような「不要な入院」によるモラルリスクの高まりを深刻に受け止めており、調査や対策の強化を進めている。胃腸炎のような軽度の病気での入院が急増している背景には、一時金を目的とした悪質な利用が疑われる。今後、保険金支払いの審査を厳格化するなど、制度の見直しが検討される可能性が高い。
この問題は、医療保険の公平性や持続可能性にも影響を及ぼす恐れがあり、社会全体での議論が求められる。生保業界では、契約者への啓発活動や、海外医療機関との連携による情報共有の必要性が高まっている。



