火災保険引き受け抑制の背景と損保のジレンマ
損害保険会社が、築年数が長いマンションや戸建て住宅に対する火災保険の引き受けを抑制する動きを強めている。これは、保険金の支払いが増加し、収益を圧迫していることが主な理由だ。特に築50年を超える物件では、リスクが約3倍に高まるとされ、保険会社の経営判断に直結している。
大手損保の火災保険は15年連続で赤字状態
主要な損害保険会社4社の火災保険事業は、実に15年連続で赤字が続いている。保険料の総額は約1兆8000億円(2024年度)に上り、損保市場全体の約20%弱を占める重要な分野であるにもかかわらず、採算が合わない状況が長期化している。
火災保険は、単なる火災だけでなく、洪水や水漏れ、家財の破損など幅広い損害をカバーする総合的な保険商品だ。しかし、老朽化した建築物では、配管の劣化や電気設備の故障などが原因となる事故が多発し、保険金の支払い額が増大している。
保険代理店からは「公共性の観点から問題」との声
2025年6月には、東京・永田町の国会議員会館で、損保代理店で構成される団体が集会を開催した。中部地方で代理店を経営する参加者は、「築40年以上の物件について、保険会社が引き受けを拒否するケースが増えている。自社の顧客も保険に加入できなかった事例がある」と具体的な問題を報告した。
さらに、この参加者は「保険には社会全体を守る公共性があるはずなのに、引き受け抑制はその理念に反する」と訴え、国会議員らに改善を求めた。この発言は、保険業界が抱える根本的なジレンマを浮き彫りにしている。
無保険者を出さない公共性と利益追求の狭間
損害保険会社は、企業として利益を追求する必要がある一方で、保険制度そのものが持つ公共性から、無保険者をできるだけ出さない社会的責任も負っている。このバランスをどう取るかが、現在の大きな課題となっている。
特に築年数が長い物件では、修理や改修が不十分なケースが多く、火災や水害などのリスクが若い物件に比べて格段に高い。保険会社にとっては、適切な保険料を設定しても採算が合わない状況が生じ、引き受け抑制や保険料の大幅値上げにつながっている。
この問題は、単なる業界の収益問題を超え、高齢化が進む住宅ストック全体の維持管理や、住民の生活保障にも関わる広範な社会問題へと発展している。関係者間では、リスク評価の精度向上や、予防措置へのインセンティブ導入など、新たな解決策の模索が続けられている。



