茨城・東海第2原発再稼働に危機感 福島事故の風化に警鐘
茨城県東海村にある日本原子力発電(原電)の東海第2原発の再稼働を巡り、市民団体「いばらき原発県民投票の会」が新たな動きを見せている。同会の事務局長を務める富岡彰さん(71)は、東日本大震災と福島第1原発事故の記憶が風化しつつある現状に強い危機感を抱いている。
原発への無関心が広がる背景
富岡さんは「日本人は歴史を大事にしない。東日本大震災が、もう過去の話になってしまっている」と指摘する。同会は2020年、東海第2原発の再稼働への賛否を問う県民投票の実施を求める署名運動を展開したが、当時は県内に原発があることを知らない人や、原発の仕組みを知らない人も多かったという。
しかし近年、「原発って大事だよね」という声が増えている印象だと富岡さんは語る。昨年以降、原発の再稼働に向けた動きが加速する中で、課題は山積しているにもかかわらず、世間の原発への抵抗感が薄れていることが背景にあると分析する。
広域避難計画の実効性に疑問
多くの人が原発に無関心になってしまう大きな要因として、富岡さんは「分かりにくさ」を挙げる。安全対策の妥当性は専門家の領域で、素人が判断するのは難しいが、広域避難計画の実効性というテーマは、多くの人が身近に感じうる課題だと指摘する。
既に策定済みの自治体の避難計画を見ると、体裁を整えただけで、これが住民の命綱になり得るのかと疑問を感じると言う。実際にそれに従って避難する住民に妥当性を問うべきだと主張する。同会では、避難計画への理解を深める勉強会などを各支部で開催し、みんなで一緒に考える機運を高めている。
県民投票運動を再開へ
原電の安全対策工事は当初、12月に完了予定だったが、ずれ込みそうな情勢だ。富岡さんは、工事が終わるタイミングに合わせ、再び署名運動を始める計画を明らかにした。前回は8万6703筆の署名を集め、県知事に条例制定を直接請求したが、県議会で否決された。
前回の反省点として、署名運動自体の認知が低かったことを挙げ、今回はより多くの人に活動を知ってもらい、倍の署名数を目標にしている。富岡さんは「私たちの活動は反原発ではない」と強調する。会としては反原発色を薄め、賛成の人も反対の人も巻き込んで、みんなで再稼働の是非を考えようという趣旨で活動しているという。
住民の意思表示を求める
富岡さんは、原発が住民の知らないところでいろいろ決まる現状を問題視する。2月にあった衆院選だけでなく、知事選でも東海村の村長選でも、原発は大きな争点になってこなかった。原発再稼働に対する住民の思いをダイレクトに反映できるのが、住民投票だと考える。
「政治に関わることが、関心を持ってもらうことにもつながるはずだ」と語る富岡さん。学生時代から漠然と原発への疑問を感じていたが、1999年に東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー」(JCO)で起きた臨界事故などを受け、原子力問題への関心を強く持つようになった。
現在は桜川市でコーヒー店を営みながら、住民が意思表示しようというシンプルな運動を続けている。原発再稼働を巡る議論が専門家任せになる中、一般市民の声を反映する仕組みの重要性が改めて問われている。



