ボーナスの季節になると、高金利キャンペーンに惹かれて新しい銀行口座を開設する人が増える。しかし、消費経済ジャーナリストの松崎のり子氏は「お金が貯まる人ほど口座を増やさない。銀行口座は減らす発想が大切で、老後を見据えるなら今のうちから“口座の終活”を始めたほうがいい」と警鐘を鳴らす。
知らず知らずに増える銀行口座、放置すると手数料負担も
日本では銀行口座の開設が容易で、クレジットカードのように収入証明や審査は不要。未成年でも口座を持てる上、スマホ経由の開設も一般的になり、ハードルはさらに下がった。そのため、社会人としてのキャリアが長くなるにつれ、口座数は自然と増えていく。勤務先の給与振込、家賃の引き落とし、住宅ローンの返済、NISA積立用資金のプール、ポイント還元の最大化など、目的ごとに口座を使い分けるうちに、気づけば4つ、5つもの口座を抱えていることも珍しくない。特に女性に多いのが、結婚前の旧姓口座をそのまま維持しているケースだ。中には開設したことすら忘れている口座もあるだろう。
放置口座には年間1000円超の手数料、休眠預金リスクも
多すぎる銀行口座は後々厄介な問題を引き起こす。まず、稼働していない口座に対して手数料を課す銀行が増えている。例えば、2年以上入出金や振込がない口座には、メガバンクの一部で年間1000円を超える手数料が発生するケースがある。現時点では残高1万円以上あれば手数料の対象外となることが多いが、残高がそれを下回ると年々資金が削られていくことになる。
さらに、10年以上取引がない口座は「休眠預金」とみなされ、残高を引き出すには通帳や印鑑、本人確認書類の準備が必要になる。結婚などで姓が変わっている場合は、通帳やキャッシュカードの再発行手続きも発生し、煩雑さが増す。政府広報オンラインも「放置したままの口座はありませんか?10年たつと『休眠預金』に。」と注意を促している。
口座の増加は管理負担も増大、セキュリティ対策が煩雑に
近年、スマホアプリでの取引が推奨される中、口座を増やすごとにIDやパスワードの管理が増える。各金融機関は不正利用対策としてセキュリティを強化しており、利用者側にも対応が求められる。若いうちは苦にならないこうした管理も、年齢を重ねるごとに億劫になる。松崎氏は「口座数を増やし続けるより、徐々に減らしていく意識に切り替えたい」と強調する。
理想は「使う・貯める・増やす」の3口座、老後は2つが目安
松崎氏によれば、理想的な口座運用は「使う・貯める・増やす」の3口座に絞ることだ。日常の支払い用、緊急時の貯蓄用、投資用と役割を分けることで、管理が容易になり、無駄な手数料も防げる。さらに、年金生活に入る前には経済圏の見直しも重要で、70代までには口座を「2つ」に減らすことを目安としている。引き落とし口座を統一すれば、家族の負担軽減にもつながる。
口座開設は簡単でも解約は困難、早めの整理を
銀行口座は開設が簡単な一方で、解約手続きは煩雑だ。通帳やキャッシュカードの返却、本人確認書類の提出、場合によっては印鑑が必要となる。松崎氏は「銀行は“開設は簡単・解約は地獄”」と表現し、早めの整理を推奨する。また、証券口座やクレジットカードも含めた「お金の終活」を老後を見据えて計画的に進めるべきだとしている。
口座整理の具体的なステップ
まずは現在保有している全口座をリストアップし、それぞれの利用状況を確認する。使っていない口座は解約を検討し、どうしても残す必要がある口座は、引き落としや振込先を集約する。特に、旧姓のままの口座や、開設したことすら忘れている口座は早急に対処したい。松崎氏は「老後になってから慌てる前に、今のうちから口座の終活を始めてほしい」と訴えている。



