「きれいだね」「うらやましい」。一見、何の疑いもない褒め言葉だ。しかし、アルビノ(眼皮膚白皮症)という疾患を持つ漫画の登場人物・華にとって、これらの言葉は「あなたはふつうじゃない」と突きつけられる瞬間でもある。周囲の反応は「変なの」「ずるい」から「きれい」へと手のひらを返すように変わるが、華はそのたびに戸惑いを隠せない。
この記事は、書籍『つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~』からの一部抜粋である。同書は、見た目の特徴によって社会的不利益を被る「見た目問題」に焦点を当て、23の事例を通じてルッキズム(外見至上主義)の実態を描いている。
「見た目問題」とは何か
「見た目問題」とは、先天的(生まれつき)あるいは後天的(事故や病気など)な理由で、顔や体に目立つ症状を持つ人々が、その見た目の特徴によって社会の中で不利益を被ることを指す。華のようなアルビノのほか、痣、傷痕、変形、欠損、麻痺、脱毛など、症状は多岐にわたる。
アルビノは、メラニン色素を作る機能が欠乏する遺伝性疾患だ。髪や肌、目の色が薄く、視覚障がいを伴うことも多い。華自身も金髪や白髪に近い髪色、白い肌を持って生まれてきた。こうした外見的特徴が、日常生活の中でさまざまな反応を引き起こす。
手のひらを返すように、変わっていく言葉
華が幼い頃、周囲の子どもたちは彼女の外見を「変なの」「ずるい」と評した。しかし、成長するにつれて、その言葉は「きれいだね」に変わっていく。一見、ポジティブな変化に見えるが、華にとっては「ふつうじゃない」というメッセージが変わらずそこにある。
「変なの」も「ずるい」も「きれい」も、すべて彼女の外見を「標準」から外れたものとして評価している点で共通している。褒め言葉であっても、それが「多数派の基準」から逸脱していることを暗に示すのだ。
「うらやましい」が、傷になるとき
「うらやましい」という言葉もまた、華にとっては複雑な意味を持つ。例えば、彼女の白い肌や明るい髪色を「うらやましい」と言われるたびに、それは「自分にはない特別なもの」として扱われていると感じる。しかし、その「特別」は、同時に「ふつう」ではないことの証でもある。
ルッキズムの問題は、悪意のある差別的な言葉だけではない。善意の褒め言葉も、当事者にとっては傷つく場合がある。『つまり、それがルッキズム』では、このような「見た目問題」の複雑さを、漫画と解説で丁寧に描いている。
華の経験は、私たちが何気なく使う言葉が、相手にどのような影響を与えるかを考えさせられる。見た目の特徴を指摘する前に、その言葉が相手にとってどう受け取られるかを意識することが、ルッキズムを乗り越える第一歩かもしれない。



