トルコ行進曲と共に走る移動商店「とらピ」、買い物難民を支援し高齢者の心も満たす
トルコ行進曲と共に走る移動商店、買い物難民支援

京都府亀岡市を拠点に、食料品や日用品をトラックで販売し、ピアノの生演奏も行う一風変わった移動商店「とらピ」が、買い物困難者の支援と高齢者の安否確認に貢献している。軽快なトルコ行進曲を流しながら山あいの集落を巡るその姿は、地域住民にとって待ち遠しいひとときとなっている。

移動商店「とらピ」の特徴

「とらピ」の小型トラックには、新鮮な魚や野菜、和菓子など約700点の商品が積まれている。店主の桃玄義成さん(40)とピアニストの妻・真実さん(37)が営むこの移動商店は、第1・第3金曜日の午後2時に集落を訪れる。近くにスーパーがなく、遠出が難しい高齢者にとっては、商品を選びながら会話を楽しむ貴重な機会だ。

買い物が一段落すると、真実さんが電子ピアノで洋楽や歌謡曲を演奏し始める。手拍子をしながら一緒に歌う小さな音楽会は、住民たちの楽しみの一つ。記者が各地で住民に声をかけると、「買いたい物を選ぶのは良い気分転換」「集まる機会が増えた」との声が聞かれ、住民同士の顔合わせは安否確認にも役立っている。

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夫婦の思いと活動の広がり

義成さんと真実さんは2年前の結婚を機に、義成さんの移動販売車の経験と真実さんのピアノを生かして「とらピ」を始めた。当初は1か所のみだったが、客の名前や好みを覚え、地域のイベントに参加するなどして関係を築き、現在は亀岡市全域、南丹市東部、京都市西部に範囲を広げ、1日8~10か所を巡回する。高齢者施設を訪れ、入所者に買い物を楽しんでもらい、音楽会を開く取り組みも定着。施設のホーム長・大橋克己氏は「移動販売とピアノ演奏は好評で、入居者・職員ともに喜んでいます」と語る。

義成さんは「先週まで元気だったのに、今週は入院していることもよくある。僕たちと接することで引きこもっていたお年寄りの心が少しでもほぐれたら」と話す。個人宅を訪問し、体調や困りごとを親身に聞くこともある。

今後の展望と買い物困難者の現状

夫婦は「音楽鳴り響く移動式子ども食堂」を始めるため、クラウドファンディングを準備中。移動販売では総菜や焼き魚の要望が多いが、どうしても食材が余ってしまう。「まだ食べられるものを無駄にしたくない」と、キッチンカーで子どもには温かい食べ物、高齢者にはできたての総菜を提供したい考えだ。

農林水産省が2025年度に実施した全国アンケートによると、回答した市町村のうち買い物困難者への対策が「必要」と答えたのは89.3%で、2018年度より約5ポイント増加。対策内容は、外出のためのコミュニティバス運行支援、移動販売車の導入・運営支援、空き店舗への出店・運営支援などが多く、とらピは亀岡市から燃料代の補助を受けている。

遠くからトルコ行進曲が聞こえてきたら、それは「とらピ」の日。おなかも心も満たす移動商店は、今日も走り続ける。

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