130年前の村長宅改装、国内初の古民家銭湯「高野口乃湯」が地域活性化の拠点に
130年前の村長宅改装、国内初の古民家銭湯が話題に

世界遺産・高野山(和歌山県高野町)のふもとに広がる橋本市高野口町。平安時代後期から参詣口として栄えたこの地に、かつてのにぎわいを取り戻そうと令和6年にオープンしたのが「高野口乃湯」だ。明治時代の建物を改装し、国内初の「古民家銭湯」と銘打つ。玄関から浴場までは明治、浴場部分は令和に増築した施設となっており、レトロと現代が交錯する空間だ。

約130年前の村長宅を改装

漆黒の壁とねずみ色の瓦屋根が映える木造平屋建ての邸宅。元は約130年前に建てられた村長宅だった。広い三和土を備えた玄関に入ると、頭上には当時のままの太いはりがわたっている。1世紀以上の風雪に耐え、往時の姿を伝える。

出迎えてくれた番頭の高瀬勇人さん(30)は「市の空き家バンクに登録されていました。屋敷の特徴を損なわないようにリノベーションされています」と話す。邸宅部分は改修した一方、浴場とサウナ、露天風呂は新築した。

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地場産業とコラボ、地域活性化への取り組み

JR高野口駅前に立地する高野口乃湯。周辺は明治期に参詣客でにぎわったが、鉄道網の変遷などで人の流れが変わった。地元の樹脂加工会社が「地域の拠点をつくり、活気を取り戻したい」との思いから、銭湯への転用に取り組んだ。

休憩スペースには明治以降、地場産業になったパイル織物で張り替えたソファ。地域が誇る「高野口パイル」をアピールし、地元愛にあふれる。

軟水の湯とサウナ、こだわりの設備

和泉山脈の地下水を使ったお湯は、軟水でさらっとした肌触り。浴槽の深さは1.2メートルあり、首までしっかりつかって温まることができる。水圧の効果による疲労回復も期待できるという。

夏場にお勧めなのが、十分に温まった後に入る水風呂だ。水圧に加えて温度差を利用することで「本当に気持ちよくて、疲れの抜け方が違うんですよ」と高瀬さんは話す。浴室の壁には日本画などの陶板画が約30枚はめ込まれていて、風呂につかりながら楽しむことができる。

サウナは30分ごとにサウナストーンに水が流れ、熱波を発生させる「オートロウリュ式」を導入。初めて訪れたという30代男性は「前から気になっていた銭湯。サウナが良かった」と話し、オリジナルのTシャツを購入していた。

番頭の思いと今後の展望

高瀬さんは金沢市出身。子供のころに連れて行ってもらった経験から銭湯にはまり、社会人になってからも「自分にとって特別な時間でした」。全国100軒以上の銭湯を巡ってきた。そんなとき、オープン間近の高野口乃湯で番頭を募集していることをSNSで知り、応募。勤めていた会社をやめて転身した。

目指すのは「常連さんと何げない会話を交わす古き良き銭湯と、入りやすく利便性の高いスーパー銭湯のハイブリッド」だという。オープンから間もなく2年、「少しずつ浸透し、前年と比べてお客さまも増えている」と手応えを話す。

地域活性化に向けては、異業種企業とコラボレーションができないか模索している。「銭湯はスポーツやレジャーとも相性がいい。銭湯に親しんでもらえるようなコラボを考えていきたい」。活気に満ちた高野口の姿をイメージし、高瀬さんは意欲を燃やす。

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