清水邦夫「夢去りて、オルフェ」38年ぶり上演、朝海ひかるがW主演で幻想的な笑いを語る
清水邦夫「夢去りて、オルフェ」38年ぶり上演 朝海ひかるW主演

劇作家・清水邦夫(1936~2021年)の代表作の一つ「夢去りて、オルフェ」が38年ぶりに上演される。W主演の一人は宝塚歌劇団出身の俳優、朝海ひかる。物語の舞台は廃墟となった遊園地で、戯曲の日本語は美しく幻想的でありながら、笑える要素も多いという。

虚実入り混じった言葉の応酬

物語の舞台は昭和14年、北陸の廃墟となった遊園地。二・二六事件で刑死した思想家、北一輝の生存を信じる国語教師、桂木一機(大石継太)の不倫騒動が周囲の人々を巻き込み、血のつながらない妹、ぎん(朝海)も帰郷。姦通罪を避けるため、さまざまな人々の思惑と虚実入り交じった言葉が交わされていく。

朝海は「台本を読み始めたら、面白くて一気に読んでしまいました。難しいかと思ったら喜劇的」と笑う。もう一人の主役、一機はくせ者で、詩的かつデタラメな言葉を連ねては周囲を惑わせる。「作品に登場するほぼすべての女性が、一機のことを好きになる設定です。口から出まかせの元文学青年の言葉に、魅力を感じてしまう。ぎんはある意味、兄が作り出す夢物語の一番のファンです」と朝海は語る。

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兄妹げんかと罵倒ボキャブラリーが魅力

一機は出征中の軍人の妻との不倫が露見しそうになると、姦通罪を逃れるため、東京のぎんを呼び出し、さらなる大芝居の〝共演者〟に仕立て上げる。「2人の言葉の応酬は、兄妹ならではのリアルな関係性を反映していますね。私自身も兄がいるので、共感できます」と朝海は話す。

劇中、頻出する兄妹げんかは大きな見どころで、「うらなり!」「つっころばし!」など懐かしくも多様な罵倒ボキャブラリーが楽しい。40年前の初演時は、清水の妻、松本典子がぎんを演じ、芸術選奨文部大臣賞を受賞した。「ぎんは、清水さんが松本さんに当て書きしたお役。もともと格好良く書かれているので、一言一句戯曲通り、ト書き通りにやることを心がけています」と朝海は語る。

蜷川組の舞台で時代を超えた宝探し

清水と縁の深い〝蜷川組〟が演出を担当。今年で没後10年を数える演出家、蜷川幸雄の元助手、大河内直子が演出を手がけ、一機を演じる大石は蜷川が清水作品を演出した舞台「血の婚礼」などに出演した。いわば清水の劇世界を良く知る〝蜷川組〟の舞台だ。

「毎日お稽古していて、時代を超えた宝探しをしている感覚です。清水さんが表現したかったことを、みんなでひもといていくのが、とても楽しい」と朝海は語る。元宝塚歌劇団雪組トップスターの朝海だが、せりふ劇の評価も高い。今年も6月末まで、こまつ座「花よりタンゴ」(井上ひさし作、栗山民也演出)に出演し、戦後の没落華族の長女を好演したばかり。「歌も踊りもないせりふ劇は、役に没入できます。一度その没入感を知ると癖になる。チャンスがあればどんなお役でも演じたい」と話し、言葉だけのごまかしのきかない舞台と向き合い、「消耗しながらも、充実しています」と笑顔を見せた。

「夢去りて、オルフェ」は8月21~30日、東京芸術劇場シアターウエストで上演。問い合わせはメール(info@ae-on.co.jp)。

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