倫太郎は、坂上どのから案内を約束され、笑顔を見せた。川面に浮かぶ舟の数や、橋から眺めた行き交う人々の多さに仰天する。川沿いを歩けば、白い蔵が並び、江戸の賑わいに眼を奪われた。どこを見ても人があふれ、床店が立ち並び、威勢の良い売り声が四方八方から聞こえてくる。
品川宿以上の繁華
品川宿でも驚いたが、江戸の町はそれ以上に繁華で、どこを向いても活気があった。想像以上の賑わいだった。しかし、時折目つきの険しい武家が歩いているのが気になる。この頃は国事を憂えて脱藩する武士もいるというから、そうした類の者かもしれない。
桜田門外の変の影響
ほんの二ヶ月前には、桜田門外で大老が暗殺されている。しかし、そんなことなどお構いなしに町は騒がしい。あまりに目紛しいため、眼が追い付かず、頭がくらくらする。人の流れが忙しなく、国許の六浦とは別の時が流れているような気がした。



