吉永小百合主演「夢千代日記」の湯村温泉街で受け継がれる平和への思い
湯村温泉街で受け継がれる「夢千代日記」の平和への思い

兵庫県新温泉町の湯村温泉街にある観光施設「夢千代館」。敷地内に建てられたモニュメント「夢千代の祈り」には、核兵器廃絶を願う広島平和記念公園(広島市)の「平和の灯」の分火がともる。同温泉街は、胎内被爆によって白血病を患った芸者・夢千代を吉永小百合さんが演じ、1981年に放送が始まったNHKドラマ「夢千代日記」のロケ地となった。

ドラマセットと平和への願い

夢千代館に入ると、昭和の温泉地を再現したドラマセットがある。撮影で使用された着物などに交ざり、2階には被爆した旧広島市庁舎前の敷石や、被爆者が制作した原爆ドームのオブジェなどが置かれている。ドラマに込められた平和への願いは今も温泉街で脈々と受け継がれている。

ロケ誘致にまい進した父の思い

夢千代日記は、脚本家の早坂暁さん(2017年死去)が原爆投下直後の広島の惨状を目の当たりにした経験が執筆に結びついた。温泉街で旅館「朝野家」を経営する湯村温泉観光協会の会長・朝野泰昌さん(70)の母・鈴子さん(98)は戦時中、「女子挺身隊」として勤労奉仕で広島市内に動員された。原爆投下3日後に爆心地から約2キロの倉庫に出向き、入市被爆した。

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ドラマの撮影に対し、物語の暗いイメージが温泉街に及ぶことを懸念する声もあった。それでも、当時、同じように観光協会会長を務めていた朝野さんの父・繁さん(17年死去)は、夢千代日記のロケ誘致にまい進した。「父は、夢千代と母を重ね合わせていたのでしょうね」と話す。放送開始から半世紀近くが過ぎ、ドラマを見たことがない人が増えたが、「夢千代日記では被爆や人々の支え合いが描かれた。湯村温泉街への来訪で知ったり、思い出したりするきっかけにしてほしい」と願う。

地元の子どもたちへ受け継がれる平和学習

夢千代日記を通じて温泉街に生まれた平和を願う気持ちは地元の子どもたちに受け継がれている。町立夢が丘中学校の生徒や卒業生は今月4日、原爆の熱線に焼かれながらも再生した「被爆アオギリ」の「孫」にあたる3世の鉢植えを湯村温泉観光協会に寄贈した。校庭に植えられた2世から種を取り、7年かけて育てた。

校庭のアオギリは夢千代館が縁を取り持ち、鳥取県の市民団体の代表から2007年に寄贈された。成長して実をつけるようになり、社会科の担当教員・郷司昌賢さん(49)が19年から平和学習で活用を始めた。「戦争体験者が少なくなり、生徒から戦争が遠のく中、自分事として捉えられるように」と考えた。生徒と一緒に毎年のように種をまき、100鉢ほどの苗木が成長している。生徒らが「アオギリを通じ、多くの人に戦争や平和について考えてほしい」と発案し、24年には町立小学校2校で植樹した。今年は、温泉街を含む町内3か所で鉢植えを寄贈したり、植樹したりした。

24年度の卒業生で贈呈式に立ち会った県立浜坂高校の2年生(16)は「80年以上前の戦争を自分だけで知るのは難しい。夢千代日記にちなんだ取り組みはここでしかできない」と話した。

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