医学部に4浪、諦めて横浜国立大学に入学するも4留の末に中退。現在30歳で無職、月収わずか3万円。それでも父親からは「医者になれ」と言われ続ける――。そんな藤井さん(仮名)の姿が、ネット上で大きな反響を呼んでいる。
「4浪4留」「八冠・留王」の肩書が生んだ転機
最初は数百人しか観ていなかったYouTubeチャンネルが伸び始めたのは、彼が「4浪4留」「八冠・留王」という自虐的な肩書を前面に押し出してからだ。除籍報告動画、簿記3級合格動画、月収3万円・無職30歳の日常動画――自分の人生のみっともない部分をそのまま編集せずに公開するスタイルが、同じように受験や進路でつまずいた視聴者の共感を呼んだ。
さらに、他の配信者からの出演依頼も舞い込むようになり、チャンネル登録者数37万人の「トマホーク」をはじめ、「未来図チャンネル」「じゅそうけんチャンネル」など教育系人気チャンネルへの出演が相次いだ。
締め切りを守れず、大学を中退し、月収3万円の30歳――そのプロフィール自体が、ネット上で強力なコンテンツになっている。
「人当たりが良く頭もいい」が、社会不適合
彼をよく知る人たちは口を揃えて「人当たりが良く、社交的で、話も面白く頭のいい人物」だと評する。実際、取材していてもその印象は強かった。しかし同時に、とにかく「締め切りを守ることができない」という。遅刻もするし、依頼した成果物も時間通りに提出できない。
それでも本人は本気で謝り、逆ギレすることもない。多くの人から愛されるキャラだが、はっきり言って社会不適合だ。
少年時代から続く「提出物が出せない」呪縛
勉強ができないわけでも、人間性に問題があるわけでもない。コミュニケーション能力は高く、話していて気持ちのいい人間だ。ただ、締め切りを守ることが絶望的にできない。
提出物を出せない少年は、宿題を放置して職員室に呼ばれ、医学部受験では家で勉強しないまま4浪し、大学では物理に興味を持ちながらも4留した。少年時代に数学の先生から告げられた「藤井は提出物さえ出せれば完璧なのに」という言葉は、その後の人生のすべてを言い当てていた。
父の「医者になれ」という呪縛
2024年10月に除籍が確定し、2025年3月に横浜国立大学を中退。30歳になった今も、父親からは「今からでも遅くないから、医学部受験を再開して医者になれ」と言われ続けている。「もし医学部に受かっても、医者になる頃には40歳だが、父は『それでも医者になりさえすればなんとかなる』と言う」と藤井さんは語る。
頭のいい子の行き先は、必ずしも研究者や医者ではない。家の中に用意された席に座れなかった子どもが、自分の席を自分で削り出して座る。藤井さんの今の姿は、その途中経過なのかもしれない。
勉強の世界に戻って医者を目指すのか、それともインターネットの世界で生きていくのか。彼は今も、悩み続けている。



