俳優の中井貴一が20日、自身の公式X(旧Twitter)を通じて、8月7日に老衰のため93歳で死去した女優・岸惠子さんを追悼した。中井は岸さんを「敬愛する先輩であり、父と盟友でもあった」と表現し、訃報に心から残念だと述べた。
アメリカロケでの思い出
中井は、約10年前にドラマの撮影でアメリカロケに参加した際のエピソードを回想。スタッフやキャストがモーテルに宿泊していたある日、夕食後に部屋へ戻る途中、岸さんが部屋着で廊下をうろうろしているのを見かけた。声をかけるべきか迷ったが、困っている様子だったため「岸さん、どうかなさったのですか?」と尋ねた。
岸さんは、明朝早いため目覚ましをかけようとしたが操作できず、マネージャーの部屋をノックしても返事がないと説明。中井は「僕で良かったら、お手伝いしますが…お部屋に入ることになりますが、宜しいですか?」と申し出ると、岸さんは「勿論よ、貴一君なら大丈夫。セットしてくれる?」と応じた。中井が部屋で目覚ましをセットした後、岸さんは大笑いしながら「嫌だーっ、思い出した。『君の名は』のロケだったか忘れちゃったけど、昔、ロケ先で佐田さん(父)にも、目覚ましセットしてもらったことがあったのよーっ。これで安心して眠れる。ありがとうねー」と送り出してくれたという。
親子での不思議な縁
中井はこの出来事を振り返り、「肌感も何も覚えていない父ですが、親子で、岸さんの目覚ましをセットするという、時空を超えたお手伝いができましたこと、心から幸せだなーと。やはり、父のDNAが、私の中にはあるのだなーなどと、ちょっと大袈裟に嬉しくなったものです」と、父で昭和期に活躍した俳優・佐田啓二さんとの奇縁をしみじみとつづった。
中井は「これで又、『貴一君』と呼んでくださる先輩が逝ってしまわれました。心から、ご冥福をお祈りいたします」と故人をしのんだ。
岸惠子さんの功績
岸さんの死去は19日、所属事務所から公表された。93歳だった。岸さんは1932年生まれ、神奈川県出身。1951年の『我家は楽し』で映画デビュー。映画『君の名は』(53年)や『女の園』(54年)のほか、市川崑監督作品の『おとうと』(60年)、『悪魔の手毬唄』(77年)、『女王蜂』(78年)、『細雪』(83年)、『かあちゃん』(2001年)など数多くの作品に出演し、圧倒的な存在感を放った。2002年には日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。04年に旭日小綬章、11年にフランス芸術文化勲章コマンドール、17年に第65回菊池寛賞と第42回アカデミー賞会長功労賞を受賞するなど、数々の賞に輝いた。



