古田敦也氏が語る「逃げるが勝ち」 中学時代のいじめと転校経験
古田敦也氏「逃げるが勝ち」 中学いじめで転校経験

夏休みが終わりに近づくこの時期、小中高生の自殺が増える傾向にある。過去に悩み苦しんだ経験を持つ著名人が、しんどい思いを抱える若者へメッセージを送る連載の第1回。元プロ野球選手の古田敦也さん(61)は、中学時代に野球部の先輩からいじめを受けた経験がある。「野球をやめたい」と切り出すまでに追い込まれていたとき、周囲の大人が勧めたのは「転校」という選択肢だった。環境を変えることで野球を続けることができた古田さんは、「苦しい状況からは胸を張って逃げてもいい」と訴える。

中学時代のいじめの実態

古田さんは小学3年で野球を始め、生まれ育った兵庫県川西市の中学校でも野球部に入部した。しかし、部の先輩はとにかく厳しかった。「1年、鉄棒にぶら下がれ!」と号令がかかると、15人くらいが一斉に鉄棒を握る。すると、先輩がバットで彼らを順にたたいていき、痛がる姿を見て腹を抱えて笑っていたという。

鉄棒から落ちると「グラウンド何周!」とどなられ、砂利の上に一列に正座させられ、太ももの上を歩かれるしごきもあった。激痛で身をよじる様子を、先輩たちはまた面白がった。顧問は見て見ぬふりをしていたため、いじめはどんどんエスカレート。グラウンドを2時間かけて60周走るだけの日も珍しくなく、野球の練習は全くできなかった。

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転校という選択肢

古田さんは何事にも真面目に取り組むタイプで、同級生が次々と部を去っていくなか、1学期の間は何とか耐え抜いた。決して安くない野球道具をそろえてもらっていたことも、子どもながらに申し訳なく感じ、親に退部を言い出せなかった。しかし、限界に達し、夏休みに入る直前に父親に「野球をやめたい。もうこんなんやってられへん」と打ち明けた。初めて部活で受けているいじめについて話すと、父は「仕方ないな」と受け止めてくれた。

親から退部の許しをもらったものの、近所に住む少年野球時代のコーチからは「そんなことで野球をやめちゃダメだ」と言われた。コーチは「いじめや暴力で学校にいられないんだったら、転校すればいい」と、思ってもみないアドバイスをくれた。勧められるがまま、夏休みの間に転校の手続きをし、2学期から隣接する別の公立中学校に通うことになった。転校先の野球部では奴隷のような扱いはされず、また野球ができるようになり、本当にうれしかったという。

悩む若者へのメッセージ

古田さんは、今置かれている環境に悩む人に対し、周りの大人に相談するよう呼びかける。親でも先生でも、近所のおじさんでもいい。真剣に向き合ってくれる大人を一人、見つけてほしいと語る。十数年しか生きていない、経験値の少ない子どもだけで考えても、いい解決策は出てこないだろう。野球部でいじめられていたとき、彼らは「あの先輩、殴ってやるか」くらいしか浮かんでこなかったという。

古田さんは二十歳くらいまで、プロの世界で通用するとは思っていなかった。中学1年で野球をやめなくて本当によかった。あのとき、近所に住むコーチの勧めがなければ、プロ野球で活躍する未来は間違いなくなかったと振り返る。「世の中って分からないよ。簡単に諦めてしまったらもったいない」と伝えたい。いま苦しくても、絶望しないで、周囲の大人を頼りながら、逃げる道も選択肢に入れてみてください。「逃げるが勝ち」という場面だってあると訴えている。

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