車中泊の画家アニー・玲奈・オーバマイヤーさんに密着、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品「美しく、はみだす」10日放送
画家アニーさんの1年に密着「美しく、はみだす」10日放送

第35回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『美しく、はみだす』(NST新潟総合テレビ制作)が10日27時からフジテレビで放送される(関東ローカル)。車中泊で全国を旅していた画家、アニー・玲奈・オーバマイヤーさんの1年間に密着する。

築224年の古民家で見つめ直す“美しさ”

アニーさんが定住地に選んだのは、四季の移ろいが美しい新潟県弥彦村。築224年の国登録の有形文化財・旧鈴木家住宅に暮らしながら、創作活動に打ち込んでいる。

老朽化が進み、存続の危機にある旧鈴木家住宅をアートの拠点にしようという試み。古民家の利活用といえば喫茶店や民泊などがイメージされる中、アーティスト・イン・レジデンスという新たな形で活用されることになった。

一人で住むには広すぎる建物にも臆することなく、自分なりの暮らしを紡いでいくアニーさん。縁側から見える中庭や夕焼けに染まる空など、弥彦の自然は創作のヒントになっていく。

地域との触れ合いから揺らぐ固定観念

車中泊時代にはなかった地域の人々との触れ合いからも、さまざまな気付きを得た。保育園で園児たちと絵を描いた際には、自由に表現する子どもたちの姿を目の当たりにし、“うまく描く”という自身の固定観念が揺らいだ。また、絵の額を依頼した職人とは、美しさの基準を巡って意見がすれ違うことも。そうした経験を重ねながら、自分を縛っていた“こうあるべき”という観念を一つ一つ解いていく。

一方で、アニーさんには、人種の違いから心ない言葉をかけられてきた過去がある。日本人とアメリカ人の両親の間に生まれたことで周囲から一線を引かれ、「その人たちの“こうあるべき”という枠からはみ出ている私は、ラインを引かれてきた」と振り返る。

知らず知らずのうちに作られる“見えない枠”は、ときに人を苦しめる。性別や国籍、職業などによって無意識に線を引き、古くからの価値観に縛られることも少なくない。アニーさんは、過去の経験から既存の価値観や表現の枠を軽やかに越え、湧き上がる怒りや悲しみも筆に乗せて作品へ変えていく。

「普通とは何なのだろうか」

NST新潟総合テレビ報道部の長谷川珠子ディレクターは、取材のきっかけを「弥彦村の古民家に移住した女性画家がどんな暮らしを送るのか、その営みを追ってみたいというシンプルな思いでした」と説明する。

しかし、取材中にアニーさんが漏らした「ずっと普通になりたかった」という言葉を聞き、「自分の中で何かが変わった気がしています」と振り返った。

底なしに明るく、すぐに地域へ溶け込んだように見えたアニーさん。その一方で、過去に投げかけられた心ない言葉が「普通になりたい」という願望につながっていたことを知り、長谷川Dは「普通とは何なのだろうか。そもそも普通であることが正しいのだろうか」と考えるようになったという。

「多様性がうたわれる世の中でも、まだまだ社会の見えない枠は存在します」とした上で、「番組では、アニーさんの姿を通して“美しく、はみだす”ことの意味を描き、視聴者に自らの在り方を見つめ直すきっかけを届けられたらと思っています」と話している。