わが生涯、悔いばっかり 『北斗の拳』ラオウと真逆 武論尊さんが語る人生と郷土愛
武論尊さん「人生、悔いばっかり」 ラオウと真逆の思い

漫画原作者の武論尊さんが、故郷の長野県佐久市に開いた「武論尊100時間漫画塾」や奨学金基金への思いを語った。『北斗の拳』のラオウの辞世の句「わが生涯に一片の悔いなし」とは対照的に、「人生、悔いばっかりですよ」と述べた。

漫画家を目指す人への無料の塾

1983年(平成30年)、故郷の長野県佐久市に、漫画家や原作者を目指す人たちに無料で奥義を伝授する「武論尊100時間漫画塾」を開いた。道場となる「さくまんが舎」には5億~6億円をかけた。ウェブなど全ての媒体を含めると、約30人がデビューしたという。

武論尊さんは「馬と違って漫画家は、とりあえずレースに出るまでが大変でしょ。ロバって分かったら最初から誰も使ってくれないですからね。シビアですよ。ある程度の能力、画力とかがないと絶対に載っけてくれないわけだから」と話す。

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講師にはあだち充先生(代表作に『タッチ』)や青山剛昌先生(同『名探偵コナン』)ら多くの漫画家が参加している。あだちさんとは、一緒にやった作品は『ショート・プログラム』だけだが、マネジャーをしている互いの兄同士が仲良くなったという。「なんで俺たちの兄貴は、俺たちが稼いだ金使って飲んでんだよ」って冗談を言い合うほどだ。

講師陣の厚意と塾生への言葉

あだち先生も青山先生も講演会などでは宿泊や交通費も含めて100万円ぐらいもらう人たちだが、「車代だけで来てくれるんで、本当に頭が下がります」と述べる。さらに漫画雑誌の編集長クラスも講師を務める。塾は月に2回開催され、午前中が編集長、午後は漫画家という構成だ。サンデー、マガジン、ジャンプといった各少年誌の編集長が全部来てくれるが、「それも本来あり得ないこと」と語る。

塾生には「大きな良い嘘をつきなさい」と言っているが、講師ごとに言うことが違うという。別の先生は「真面目にリアルに書きなさい」と言う。「君たちは勝手に自分に合う意見を取りなさい、正解のない世界だから」と伝えている。

「引退できないな」という思いもある。「頑張って現役でいないと塾生たちが言うこと聞かないっていうのがあるじゃないですか。『過去のおっさんが何言ってんだ』っていう扱いと、『うわあ、このおやじまだ現場で頑張ってるわ』では」と語る。業界は「ものすごく公平」で、今書くものが面白いかどうかだけで判断され、新人と全く同じ扱いだという。「待ってても何の仕事も来ないですよ」と述べ、現在は3年かけて持ち込みで「やっと日の目を見そうなのが出てきました」と明かした。

郷土への貢献と作品への思い

母子家庭など経済的理由で進学が難しい人に、1年間100万円を4年間給付する奨学金の基金として、佐久市に累計8億円を寄付した。「奨学金もやってみると、自分と同じ母子家庭が多いことが分かって、後付けながらやってよかったですね」と振り返る。「仲間たちを中心とした地元の輪を元気にしたい。それだけ自分は佐久市が好きなんです」と語った。

これまでの作品数は読み切りを含めて100タイトルぐらい。「でも…まあ、よく書かせてもらえたな」と述べる。実際に書いたことが実現したかどうかは「あんまり意識してない」という。しかし『B(ビ)EG(ギ)IN(ン)』(画・池上遼一)では「21世紀は、〝暴君の時代〟なのかもしれない」と書き、プーチン露大統領とトランプ米大統領と中国の習近平国家主席の顔を描いたという。「だいぶ前に」と付け加え、その中で富士山が爆発し、直下型地震が来る展開があるが、「それは来てほしくないですね」と述べた。

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『北斗の拳』の主人公ケンシロウの長兄であるラオウには「わが生涯に一片の悔いなし」という辞世の句があるが、武論尊さん自身は「いやいや、だからそれ逆ですよ。人生、悔いばっかりじゃないですか。そうやって一度ぐらい言ってみたいと思うけど、そんなヤツはいないですよ、って話。人生、悔いばっかりですよ」と締めくくった。