文楽鑑賞教室で「仮名手本忠臣蔵」、切場の三味線に抜擢された45歳・鶴沢清馗…心の揺れ動きをバチに乗せて
文楽鑑賞教室で切場の三味線に抜擢された鶴沢清馗

国立劇場主催の文楽鑑賞教室が9月10~20日、東京・東陽町の江東区文化センターで開かれる。名作「仮名手本忠臣蔵」の五・六段目が上演され、クライマックスの切場「早野勘平腹切の段」を45歳の三味線奏者、鶴沢清馗が初めて勤める。

抜擢の知らせに「青天の霹靂」

「お客さんと共に成長したい。今を見て、この先も見てもらって、『あかんな』『ちょっと変わったな』と思ってもらえるように」と語る。

切場の三味線という抜擢を、配られた配役表で知った。「間違ってるんじゃないかと、紙の裏側も見ました。青天の霹靂とはこういうことですね」。まず、一緒に勤める豊竹呂勢太夫のもとへ駆け込んだという。

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呂勢太夫は、清馗の師匠・鶴沢清治の三味線で長年語ってきた。稽古に入る前から、「勉強する姿勢や太夫さんのアプローチを説明してくださる。ありがたいです」と語る。長く険しい道のりだが、「細かくやってもらえるということは、ちょっとした期待もあるのかなと、いいように捉えています」と目尻を下げる。

「暗く悲しいすれ違いの話」の心情表現

「赤穂事件」を題材に武士の忠義を描く全十一段の「仮名手本――」のうち、五・六段目は、主君の刃傷事件に立ち会えなかった早野勘平と恋人おかる、その両親の家族の悲劇を取りあげる。「暗く悲しいすれ違いの話。心情のせめぎ合いが多い」と感じている。

敵討ちに加わるための金を工面しようとおかるは祇園へ身を売るが、勘平は前金50両を持っていたおかるの父・与市兵衛を撃ち殺してしまったと思い悩む。おかるの母も、勘平が与市兵衛を殺したと疑い、ののしる。「単に怒っているわけではなく、足取りも若々しくならないように」と気を配る。

勘平は腹に刀を突き立てるが、与市兵衛を殺したのは山賊だったと明らかになり、老母は家族で暮らした家に一人残される。「悲しさを増幅させるようにたたみかけていくが、そこには哀愁や切なさを漂わせないといけない」と、心の揺れ動きをバチではじき出した音で表現する難しさを語る。

祖父から続く文楽三味線の家系

清治の取り組みを見て、「一音の入り方、音の作り方、全部が工夫されている」と並々ならぬ思いを感じてきた。「間の取り方や音のないところからの入り、気付かないように変化を付けているところと、言葉にしにくいすごみがある」

祖父は文楽三味線の二代目鶴沢道八、伯父は清治。兄・竹本織太夫は太夫を志し、弟は自然と三味線の道に進んだ。5歳から地歌の稽古に通い、三味線や琴に親しんだ。そこから40年。「突き詰めていく過程は、やりがいのある仕事。覚悟がいります」

Aプロは午前11時開演、Bプロは午後2時半開演。清馗はBプロに出演。問い合わせの電話番号は0570・07・9900。

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