TBS系火曜ドラマ『君の好きは無敵』(毎週火曜 後10:00)に登場するハイエナのキャラクター「チュチュチュエラ」や「シニカルモルコ」「まんぷくもる子」「ベリーグッドベリー」など、オリジナルキャラクターのデザインを手がけた三浦のどかさんが、制作の裏側を語った。
まんぷくもる子とシニカルモルコの誕生
まんぷくもる子とシニカルモルコは、脚本に書かれていた名前やセリフをもとに2026年1月末ごろからデザインを考え始めたという。まんぷくもる子は「まんぷく」という言葉から連想し、「もる子」の“もる”をご飯を“盛る”ことだと勘違いしたことがきっかけで生まれた。三浦さんは「初めのプロデューサーと監督との打ち合わせでこのデザインを持っていきましたが、そこでもる子の“もる”がモルモットの“モル”だったと知りました(笑)」と振り返る。
その後、モルモットらしいデザイン案も描いたが、着ぐるみ制作やぬいぐるみを座らせることを予定していたこともあり、「ご飯をもっている子がかわいいね」「2頭身で手足を自由に動かせるタイプがいいね」という打ち合わせを経て、現在のデザインにたどり着いた。
一方のシニカルモルコは、まんぷくもる子と対になるキャラクター。瀬尾にとっては「改悪された」もの、MERRYの大三島匠(本郷奏多)にとっては「より売れるデザインになった」ものという説得力が求められ、苦戦したという。打ち合わせでは「かわいい」に対する信念をもった瀬尾が嫌がりそうな改変案を出し合い、手だけ長くしたり、八頭身にして少し気持ち悪さを出したり、野菜スティックをタバコのように持たせたりと、さまざまなアイデアを検討。改変されても“MERRY的なかわいさ”は残す方向性で、フードを目深にかぶり、目つきは悪く意地悪そうに笑っているがどこかかわいらしいモルコが誕生した。そこからフーセンガムやスケート、グラフィティ的なペイントなどストリートカルチャーのイメージをデザインソースとして取り入れ、世界観を広げていった。
ベリーグッドベリーはレトロデザインを追求
ベリーグッドベリーは、瀬尾が作った他のキャラクターたちと同時進行で制作。「キャラクター数が多かったため、他のデザイナーさんの手も借りました」と三浦さんは明かす。ベリーちゃんはTBSアクトのデザイナー・矢澤尚弥さんの案をベースに、子どもが真似してすぐに描けるシンプルなデザインを目指した。
キティちゃんのようなキャラクター界のレジェンド的存在という設定だったため、1970〜80年代初期を感じさせるレトロなデザインを意識。「この年代のキャラクターデザインやぬいぐるみをかなり参考にしています」と話す。舌が少し出ているのはプロデューサーの岩崎(愛奈)さんのアイデアで、「おちゃめさが出て、より個性的でかわいくなったと思います」と語った。エンディングで松本、佐野がキャラクターのパペットとともにダンスを披露しているが、そのパペット制作のため、イラストでは分かりにくかったベリーちゃんの帽子の位置を探るべく、粘土で立体物を作ったという。
チュチュチュエラは「一番難しいキャラクター」
三浦さんが「一番難しいキャラクターだった」と振り返るのがチュチュチュエラだ。デザインがエピソードと直結するため、キャラクターの設定と見た目を同時に考える必要があった。「『ただ支える』というコンセプトは早い段階からありました。『積極的に励ますなど、何か役割があるようなキャラクターではなく、控えめに寄り添ってくれるような子で…』と、徐々にキャラクターの輪郭が作られていきました」
劇中で草壁が作っていた「コンセプトに絡む名前とモチーフ100」のように、アイデアの起点になる言葉やモチーフをプロデューサーと監督からもらい、そこから造形することもあった。行き詰まると利き手とは反対の手でイラストを描いたり、絵の具を垂らしてできた模様からキャラクターを連想したりしたことも。さまざまな案からモグラとハイエナの二択に絞られ、どちらも土の中や穴ぐらを棲家にする動物で、草壁がクローゼットに入ったり机の下にもぐったりする姿とリンクするアイデアだった。最終的にチャームポイントが多いハイエナのデザインに決定し、ブラッシュアップを重ねてリボンをつけた今のチュエラが誕生した。
チュエラは、瀬尾が草壁を“ハイエナ”呼ばわりしたり、草壁から聞いたバレエのチュチュの思い出のエピソードなど、2人が出会い衝突したり話をしたりする中で、瀬尾が着想を得て生まれるキャラクター。第4話に登場した設定案では「いつもひとりぼっちだった」という設定が明かされ、草壁と出会う前の瀬尾に重なる。SNSで「チュエラは瀬尾くんだ」という感想を多く見かけたことが、三浦さんにとってうれしい反響だったという。
「男の子だけどかわいいものが好きで、ちょっとはぐれものだけど本当は優しくて…という、瀬尾さんに重なる部分を、見ている人に受け取ってもらえていたのがうれしかったです。2人が出会ったことで生まれたキャラクターとして、素晴らしい着地になったと思います」
三浦さんはキャラクターの“生みの親”と言われることも多いが、「実のところ、皆でアイデアを出し合って会議を重ね、徐々に作り上げていったものなので、キャラクターは作品のチームで生み出したもの」と語る。「誰かから刺激を受けたり、協力することで、1人で取り組むときとは違った面白さや良さのものが作れるという、作中で瀬尾さんがした経験をリアルに体験させていただきました」
キャラクターの“同一性”を保つこだわり
三浦さんが最も意識したのは、キャラクターの“同一性”を保つこと。「(キャラクターの同一性を保つことは)一番難しかったです。別のポーズや表情を描くときでも、一番初めに作成したマスターのデザインから顔や頭身が変わらないように気をつけました」
特にもる子とモルコは頭の形と目の大きさのバランスが難しく、少しズレるだけで印象が変わってしまう。「自分で描いても『なんか似てないな』となることが多かったです」と苦笑する。目の大きさと距離感は特に意識したポイントだという。
第4話に登場したチュチュチュエラのキャラクター設定案も、脚本のストーリーをもとに大まかなラフを描き、カメラで撮影した際の画面への入り方を考えながら構図を決めた。開いたときに左右どちらにどの絵がくるかは、監督と相談しながら何度も試作を重ねた。チュエラが草壁の胸に飛び込むような流れを作るため、チュエラが踊っているイラストを入れたページを足したという。
設定案を描き進める中で、チュエラがハイエナをモチーフにしたデザインで良かったと実感したという。「チュエラが踊ったり、ジャンプしたりするイラストを描くときに、しっぽや耳で動きをつけられたので、描きやすかったです」と笑う。絵の方向性はチュエラの完成デザイン画に寄せ、「スケッチに水彩着色したような柔らかいタッチ」に仕上げた。これは、第3話で手を怪我していて画材を持ち替えにくい瀬尾でも扱えるようにと、水彩絵の具を使ったことがきっかけだったという。
かわいさの鍵は“愛着”
普段は小道具制作をしている三浦さんは、劇中に登場する絵を描く際、登場人物の気持ちになったりドラマの雰囲気に合わせたりしながら、「演じるのと同じように作品に入り込んで制作する」ことを意識している。今回はさらに“キャラクターデザイナー”という役割を意識して絵を描いた。「役を演じるように描くというのは、『プロはこの道具を使っている』『こういう風に考えるはず』『クオリティを上げるためにどうすればいいか』という研究をしなければ成り立たないので、なりきって制作するというのは意味があると考えています」
最後に“かわいいイラスト”を描くコツを尋ねると、三浦さんは“愛着”にヒントがあると教えてくれた。「オリジナルのキャラクターを作る場合、一回描いて『あんまりかわいくないな』と思ったとしても、何度も描いているうちにかわいく思えてくる…ということがあります。何をかわいいと感じるかは人によって違うのでとても難しいのですが、愛着を感じる、感じさせるかどうかが“かわいさ”の鍵かなと思います」
そして、作中に登場するキャラクターたちの描き方を楽しめるポイントも。「CMに入る前などにイラストのキャプチャー画面が数秒流れているので、そこも見ていただけたらうれしいです!」と呼びかけた。



