eスポーツライターの小川翔太氏が、PC・スマホ向け対戦ゲーム『Shadowverse』(シャドバ)のプロリーグが崩壊から再始動するまでの2年間を追った。
2年前、小川氏はプロリーグの休止が発表されたタイミングで、同リーグが抱える課題を指摘する記事を執筆。その後、満を持して再始動した新リーグは、従来のeスポーツでは見られない異例の施策によって好調な船出を遂げた。
旧プロリーグ休止の背景と新リーグの再始動
旧プロリーグが休止した表向きの理由は、新タイトル『Shadowverse: Worlds Beyond』(シャドバWB)への移行期間の発生。裏の理由としては、視聴者層の固定化により新規獲得が難しくなったことがある。
2025年6月にシャドバWBがリリースされ、ユーザー数、収益ともに好調なスタートを切ったが、同時に再開したプロリーグは当初好調だったものの、日を追うごとに同時接続数が低下した。
小川氏は、シャドバのプロリーグが盛り上がり切らなかった理由について、一般的な言説として語られる「カードゲームは格闘ゲームと比べて画が地味で、視聴者に凄さが伝わりづらい」という点には同意できないと述べる。
『ストリートファイターⅥ』の「ストリートファイターリーグ」は、ゲーム会社主導ではなく、ゲームセンター時代からのコミュニティが30年かけて醸成した文化や様式、演者を引き継いだもの。一方、シャドバのプロリーグはそれらを引き継がず、「0→1」で立ち上げた形だという。
2018年のプロリーグ発足時、当時のプロデューサー木村唯人氏は「シャドバ自体が10年は続けるという目標で作っています。プロリーグも10年続けます」と語っていた。しかし、格闘ゲーム30年の文化とコミュニティを10年でキャッチアップするのは難しかったと小川氏は指摘する。
異例の選手選考とオーディション
2026年、旧プロリーグの解体が発表され、所属チームや選手も完全に白紙に。新リーグ「Shadowverse Premier Series 26-27」(プレミアシリーズ)の発足に向け、ゲーミングチームの一般公募がスタートし、国内最強クラスのメンツが集まった。
選手の選考基準として、5つの要素(発信力、未来を担う自覚、人間性、実績・プレースキル、参戦チーム意向)が公表された。特に「発信力」(SNSや配信を通じてファンと健全な関係を築ける力)と「人間性」(模範となる行動ができること)が明記された点が特筆される。
各チームは選手を選ぶタイミングが3回(逆指名枠、ドラフト枠、オーディション枠)あり、オーディション枠から最低1名を獲得する方式が公開された。eスポーツでは聞きなじみのない「オーディション」という単語が使われ、二泊三日の合宿の様子は密着番組「THE LAST DRAW」としてABEMAで放送された。
合宿は木更津市内から車で30分の「房総クロスヴィレッジ」(千葉県君津市)で行われ、参加者は元プロ選手からコスプレイヤー、医者、公務員、フリーターまで様々だった。小川氏が現地取材したところ、候補者にはゲームの実力だけでなく、協調性や主体性、発信力が求められたという。
新リーグ開幕とファンの反応
最終ドラフトは幕張メッセで開催された「Shadowverse Fes 2026」で披露され、全8チームの選手が初お披露目された。開幕戦は2026年7月11日・12日、会場は「TOKYO NODE」でオフライン開催され、ファンで埋め尽くされた。
開幕戦から1週間後、インテックス大阪で開催された「RAGE Shadowverse Japan Championship 2026 Season 2」の会場で、小川氏が50名ほどに聞き取り調査を実施したところ、プロリーグの認知度は100%で、ほぼ全てのファンに推しチームや推し選手がいた。
従来からの知名度のある選手だけでなく、オーディション合宿からプロになった選手への応援の声も多かった。小川氏は、ゲームの実力だけでなく、リアリティーショーでの言動や最終ドラフトでのスピーチなど、人柄を知るタッチポイントが多かったことで、ファンが感情移入しやすくなった可能性を指摘する。
新リーグ「プレミアシリーズ」には公式サイトを含め「プロ」という文言はどこにも明記されていない。関係者によると、従来のプロリーグとは異なることを全面的に打ち出す意図があったという。小川氏は、同リーグを「プロフェッショナルな戦いを楽しむリーグ」でありながら、eスポーツ史上初の「選手がプロになっていく過程を楽しむリーグ」と解釈している。



