鳥取県大山町御来屋地区の海沿いの道を歩くと、カラフルな魚や動物の絵で彩られた防波堤や倉庫が目に飛び込んでくる。歴史ある港町を未来へつなぎたいという住民の思いが詰まった「御来屋ストリートアート」だ。
人口減少への危機感から始まったアートによる町おこし
御来屋の名前は、1333年に後醍醐天皇が隠岐から脱出してたどり着いたという伝承に由来する。サザエの水揚げ量県内一を誇る漁港だが、2005年に1495人だった地区の人口は、今年7月30日時点で928人まで減った。
2017年、人口減と高齢化に危機感を持った地元有志は、アートによる町おこしを模索。米ハワイ在住の壁画作家ジョン・プライムさん(56)を招いた。プライムさんは、「ゆっくり時が流れているようで、人も温かい。故郷のような安心感がある。サザエもウニもおいしい」と魅せられた。
住民の手形を取り入れた「マナリマ」という手法
プライムさんの手法として、ハワイ語で「手からのエネルギー」を意味する「マナリマ」がある。単に建物に絵を描くだけではなく、地元住民らの色とりどりの手形を作品に取り入れる。プライムさんは「アートをきっかけにビジネスや音楽が生まれ、若者が帰ってきたくなるまちになれば」と思いを込める。
住民主体のプロジェクトで作品が増え、観光客も来訪
その後、住民主体の地域自主組織「支え合いのまち御来屋」が、隔年で作家を招くプロジェクトを始めた。作家は小中学生らと一緒に制作にあたり、クジラやウミガメと子どもたちが遊ぶ姿を描いた「海と海の子ども」(幅14.4メートル、高さ2.4メートル)など4作品が加わった。知名度は次第に高まり、県内外、さらに海外からも観光客が訪れるようになった。
同組織で会長を務める会社員薩摩浩さん(61)は、「子どもたちが愛着を持ち、色んな人に集ってもらえるまちにしたい。いつかすべての防波堤をアートで埋め尽くせたら」と笑顔を見せた。



