滋賀県彦根市は、昨年12月に亡くなった映画監督・原田眞人さんの遺志を受け継ぎ、今年3月に初の「彦根映画祭」を開催した。市の財政難を乗り越えるため、クラウドファンディング(CF)で約1590万円を集め、実現にこぎ着けた。
「映画のまち」への思い
原田監督は生前、トークショーやインタビューで「『映画のまち』を目指してほしい」と彦根に何度もエールを送っていた。彦根城をはじめとする歴史遺産や琵琶湖などの自然環境に加え、市民のバックアップ体制が業界内で広がり、近年は国内外の映画撮影に使用されるようになった。
「単なるロケ地ではなく地域活性化につなげ、映画のまちとして根付かせたい。その一手が『彦根映画祭』だった」と、市エンタテインメント課の山田竜平さん(41)は振り返る。
CFで資金を確保
映画祭構想が本格的にスタートしたのは2025年1月。原田作品の3分の1以上でタッグを組んだ映画プロデューサー・鍋島寿夫さん(72)らをメンバーに実行委員会が設立された。しかし、財政難に苦しむ市にとって、全国規模の映画祭を開催する資金を捻出する余裕はなく、企業や市民らに支援を募るCFを活用した。
新たな取り組みに賛同する人の輪は広がり、25年4月から2度にわたってCFを実施すると、一般の寄付金と合わせて計約1590万円が集まった。山田さんは「市民の期待の大きさを肌で感じた」と話す。
初開催と原田作品の人気
資金のめどがたち、初めての映画祭開催の準備が整ったとき、同年12月に原田監督が76歳で亡くなった。関係者は喪失感に覆われたが、「映画祭を必ず成功させる」と決意を新たにした。
初の映画祭は26年3月に開催。市は開催を前に、市内でロケをした映画の中から「印象に残っている作品」を市民から募り、上位10作品には吉永小百合さん主演の「青い山脈」(1963年)や「偉大なる、しゅららぼん」(2014年)、「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」(23年)などと並び、原田監督の遺作「BAD LANDS バッド・ランズ」(23年)と「関ヶ原」(17年)が入った。
映画祭最終日の3月29日、クロージングセレモニーで鍋島さんらが「また来年も」と観客に呼びかけると、拍手が鳴りやまなかった。山田さんは観客席の後方からその様子を眺め、喜びをかみしめていた。
次回への展望
次回以降は若手の監督やプロデューサーの登竜門、支援の場と位置づけ、作品コンペも検討されている。鍋島さんは「ここから原田監督のような映画人が生まれてくれれば」と願い、山田さんは「『映画のまち』として定着するまでやるしかない。それが私たちの監督への恩返しです」と語った。



