商船三井ミュージアム「ふねしる」(大阪市住之江区)で、開業1周年を記念した特別展『せんいんになろう展』が9月30日(水)まで開催されている。この特別展では、船の運航やエンジン管理を担う「海のプロフェッショナル」を育成する広島商船高等専門学校(広島商船高専)商船学科4年生の学生らが企画・製作した展示やゲームを通じ、船の仕組みや船員の仕事を楽しく学ぶことができる。
学生主体の企画で船員の魅力を発信
特別展の準備は2026年4月から始まり、主体となったのは広島商船高専の学生たち。岸拓真准教授は「私たち大人はチェックしただけ」と語る。例えば、実習に密着した映像も、企画から撮影、編集までを学生が手がけた。画面上のテロップには専門用語を使わず平易な言葉を用いるなど、わかりやすく伝える工夫が光る。
また、安全に関するグッズを集めるゲーム「広島丸が緊急事態!サバイバルゲームを通じて船の安全を学ぼう」は、学生がプログラミングして開発した。日頃からデジタルトランスフォーメーションに目を向け、先進的な学びの習得にも力を入れている成果が活かされている。
「ふねしる」の現状と特別展の狙い
「ふねしる」は、日本の暮らしを支える海運の役割や船員の仕事を楽しく学べる体験型ミュージアムとして確固たる地位を築きつつある。上田和季館長は「来場する子どもたちが楽しんでくれていて、リピーターも多い」と1年経った手応えを語る。週末には家族連れで賑わい、310度を囲うLEDスクリーンの操船シミュレータや、風の力で水素を作って運ぶ未来の船「ウインドハンター」体験、描いた船の絵が壁面を動くインタラクティブアート「船をえがこう!」が特に人気だ。
しかし、上田館長は「船員になる方法」を伝える要素が不足していると指摘。「スペースにも限りがあり、常設展ではカバーできない」と明かす。そこで、広島商船高専、弓削商船高等専門学校(弓削商船高専)、大島商船高等専門学校(大島商船高専)とコラボレーションし、開業1周年記念特別展『せんいんになろう展』が実現した。3つの商船高専にとっても認知度向上の機会となり、双方にメリットがある。
学生たちの創意工夫が光るコンテンツ
展示やゲームの企画・製作は、幹事校の広島商船高専商船学科4年生が担当。3年ほど前から同校と商船三井グループとの間で様々な取り組みを実施してきた背景がある。岸准教授は「どうすれば入学する後輩たちの人数が増えるのか、広報的な視点で考えてもらった」と、推進するアントレプレナーシップ教育の一環としての意義を強調した。
他にも、実際に学校で使用されているヘルメット、ロープ、各種油、救命浮環、救命胴衣、海図と井上式三角定規、係留策、ヤシの実などのアイテムに触れる展示や、広島丸の塗り絵など、学生たちが“お客さま目線”に立って知恵を絞ったコンテンツが並ぶ。上田館長は「幼稚園児や小学校低学年などの小さな子どもたちにもわかりやすい展示にしてほしい」とオーダーし、それが見事に体現されたコンテンツの数々に満足気な表情を浮かべた。岸准教授は「最も大切にしたのはコミュニケーション。チームワークを発揮して、全員が意欲的に一生懸命に取り組んでくれた」と学生たちをねぎらった。
出前授業「夏休み自由研究講座」も開催
8月1日から16日までの土日祝日には、広島商船高専・弓削商船高専・大島商船高専の先生による出前授業「夏休み自由研究講座」が行われる。各回定員10名程度、事前予約不要で各回開始30分前より整理券を配布。参加無料だが、ふねしる入館料が別途必要。岸准教授は「今回の特別展をきっかけに、各商船高専のオープンスクールや学園祭にも足を運んでほしい」と呼びかけた。
イベント詳細
イベント名:せんいんになろう展
開催期間:2026年7月10日(金)~9月30日(水)
料金:無料(ふねしる入館券が別途必要)
休館日:7月16日(木)、9月3日(木)・10日(木)・17日(木)
会場:商船三井ミュージアム「ふねしる」(大阪府大阪市住之江区南港北2-1-10 ATC ITM棟2階)
開館時間:日~水曜10:00~18:00(最終入館17:30)、金・土曜10:00~18:30(最終入館18:00)
入館料:平日 高校生以上800円、小中学生400円、未就学児無料;休日 高校生以上900円、小中学生450円、未就学児無料
上田館長は「船や船員に興味を持つ子どもたちが一人でも増えるよう、次の1年は今回の特別展のようなコラボイベントも積極的に作っていきたい」と力を込めた。広島商船高専の学生たちが“未来の後輩”に向けて企画・製作した展示やゲームに触れ、船や船員の知られざる世界に浸ってみてほしい。



