ハンガリーの鬼才パールフィ・ジョルジ監督が手掛ける異色のヒューマンドラマ『雌鶏』(2026年9月25日公開、配給:ハーク)のメイキング写真と、動物たちの演技を支えた世界的動物トレーナー、アルパード・ハラシュのインタビュー映像が公開された。
ニワトリ主演の寓話、8羽の雌鶏が熱演
本作は、養鶏場から搬送中に逃走した1羽の雌鶏の旅を、人間の欲望や社会の理不尽さをユーモラスに描いた寓話。「鶏は三歩歩くと忘れる」という俗説を覆すシーンを、8羽の雌鶏が役割を分担して演じる。演技未経験の「新人俳優」たちは、著名な動物トレーナーであるアルパード・ハラシュの指導のもと、CGIや特殊効果に頼らず実演で撮影が行われた。
監督・脚本を務めたパールフィ・ジョルジは、『ハックル』(2002)と『タクシデルミア ある剝製師の遺言』(2006)がアカデミー賞国際長編映画賞のハンガリー代表に選出された実力派。本作では雌鶏の目を通して移民問題、人身売買、貧困、格差など現代ヨーロッパ社会の問題を鋭く描き出す。2025年の第50回トロント国際映画祭では「大胆さ、知性、創造性にあふれ、他に類を見ない驚くべき独創性」と評され、審査員特別賞(特別表彰)を受賞。同年、第38回東京国際映画祭や第73回サン・セバスティアン国際映画祭でも上映され好評を博した。
トレーナーが語る撮影秘話、信頼関係の構築
主人公の雌鶏を含む動物たちのトレーニングを担当したのは、ブダペストを拠点に活動するアルパード・ハラシュ。『エイリアン:ロムルス』(2024)、『哀れなるものたち』(2023)、『クロール ―凶暴領域―』(2019)、『ミッドサマー』(2019)、『ブレードランナー 2049』(2017)など多数の作品に携わってきたスペシャリストだ。映画制作の傍ら、動物保護施設を運営し後進の育成にも力を注ぐ。
アルパードと彼のチームは数か月かけて雌鶏たちを撮影に向けてトレーニングし、その後、動物たちとともにトラックで撮影地のギリシャへ渡った。パールフィ監督はアルパードの存在が、主人公の雌鶏がスクリーン上で役目を果たせる「最大の保証だった」と振り返る。メイキングでは、音と合図を結びつけて覚えさせるトレーニング方法や、触れ合いを通じて人間に慣れさせ、スタッフ総出で抱きかかえたり餌を与えたりする様子が映し出されている。動物たちをリードでつなぐことなく自由に行き来させる現場には、人間と動物の深い信頼関係が感じられる。
トレーナーの信条「ニワトリを訓練できないなら、犬に試すな」
アルパードが動物トレーナーを育成する際、最初に課すという意外な課題がある。それはニワトリに芸を教えることだ。その理由を象徴するのが「ニワトリを訓練できないなら、犬に試すな」という彼の信条である。
今回公開されたメイキング写真は全5点。雌鶏のトレーニング風景や、撮影現場のカチンコに興味を示す姿、レストランを営むおじさん役のヤニス・コキアスメノスと、その飼い犬として出演する犬の満面の笑顔を捉えたショットなどから、現場の穏やかな空気と互いの信頼関係が見て取れる。
ストーリーと出演者・スタッフ
養鶏場で生まれ育った1羽の雌鶏が、出荷用トラックから脱走する。人生初の自由を手にした彼女は、刺激と危険に満ちた世界を走り抜け、ワケあり一家が暮らす家へ辿り着く。庭のニワトリ小屋で新生活を送る中、初恋を知り、初めて産んだ卵を温め育てようと決意するが、卵は毎日人間に回収されてしまう。人生とは何か、生きるとは何かを問いかけながら、雌鶏は我が子がヒヨコになる日を夢見る一方、飼い主一家はとある事件に巻き込まれていく。
出演者は、雌鳥役にエスティ、サンディ、フェリ、エンチ、エティ、エニクー、ノーラ、アネットの8羽。レストランのオーナー役をヤニス・コキアスメノス、少女役をマリア・ディアコパナヨトゥ、少年役をアルギリス・パンダザラスが務める。監督はパールフィ・ジョルジ、脚本はパールフィ・ジョルジとルットカイ・ジョーフィア、プロデューサーはタナシス・カラタノスが担当。©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF。



