映画『ミニオンズ&モンスターズ』(公開中)で、新たなミニオンたちが1920年代のハリウッドを舞台に映画作りに挑む。シリーズ4作品で共同監督を務め、すべての作品でミニオンの声を担当してきたピエール・コフィンが、初めて単独で監督を務めた。
企画誕生の背景
本作は、映画が産業として花開いた時代を舞台に、サイレント映画へのオマージュや古典モンスター映画への愛を詰め込んだ作品だ。コフィン監督に、企画誕生の舞台裏や日本語を使った“呪文”、言葉に頼らないミニオンの表現について聞いた。
コフィン監督は、企画が生まれた経緯について「いくつかの段階を経て生まれた企画です。ある日、プロデューサーのクリス・メレダンドリから電話があり、『新しいミニオン映画のアイデアがあるので、まずは聞いてほしい』と言われました」と語る。
その内容は、ミニオンたちがモンスター映画を作ろうとする物語。モンスターを自分たちで生み出すのか、それとも召喚するのか、その時点では決まっていなかったが、やがてモンスターがミニオンたちや世界に牙をむき、彼らが自分たちの起こした騒動を収拾しなければならなくなる、という構想だった。
そのアイデアを聞いて、再びミニオンの世界を描くのであれば、できる限り独創的な作品にしたいと思ったという。「自分なら、どんなミニオン映画を作りたいだろう」と考えた結果、ケビン、スチュアート、ボブという過去作でおなじみの3人ではなく、新しいキャラクターを主人公にしよう、1920年代のハリウッドを舞台にしよう、と次々にアイデアが浮かんだ。映画作りそのものを題材にできますし、映画が産業として大きく発展していった時代を舞台にできるからだ。
そこでクリスに「僕が物語の骨格をまとめてもいい?」と尋ね、3週間後には、皆さんがご覧になった映画とほぼ同じ内容の構成案が完成した。「ただ新しい一本を加えるのではなく、これまでとは違うミニオン映画にするため、自分が独創的だと感じる要素を盛り込みました」とコフィン監督は語る。
日本語の呪文とミニオン語の音楽性
ミニオン語には「味噌スープ」「焼きおにぎり」「大福」といった日本語も登場する。なぜ、この場面に日本語を取り入れたのかについて、コフィン監督は「大きなモンスターを『怪獣』と呼ぶ設定から、日本的な方向性が生まれました。それなら、怪獣を呼び出す呪文も日本語らしいものにしてはどうかと考えたんです」と説明する。
ただ、ミニオンはドラマチックな言葉や、きちんとした文章を話すキャラクターではない。そこで、日本語の響きを持ちながら、重大な呪文のようにも聞こえる言葉を選んだという。
「例えば『味噌スープ』という言葉を、とても重要な呪文を唱えるように大真面目に発音する。話している内容と言い方とのギャップが、ミニオンらしい笑いになると思いました」とコフィン監督は語る。
ミニオンは、ほとんど言葉を使わなくても感情が伝わるキャラクターだ。演出する上で大切にしていることについて、コフィン監督は「とても良い質問ですね。ミニオンにとって、言葉はほとんどの場合、必要ではないと思っています。おそらく9割くらいはなくても成立します」と答える。
「ミニオン語は、彼らが何を言っているのかを理解するための『小さな音楽』のようなものです。それが冗談なのか、誰かをからかっているのか。音の調子によって、意味を推測するための手がかりを与えています」と続ける。
その音を慎重に選び、場面の状況やアニメーション、ところどころに入る単語を組み合わせることで、観客はミニオンが何を話し、どう感じているのかを理解できる。長年ミニオンを作り続ける中で、彼らの表現は非常に音楽的なのだと気付いたという。「ミニオンの言葉や感情を理解してもらう上で、その『音楽』がとても重要な役割を果たしています」とコフィン監督は語った。



