老朽化で令和5年10月に閉場したまま再開場の見通しが立っていない東京・国立劇場について、東京都内で8月、早期再開場を求めるシンポジウムが開かれた。過去、2度の入札が不成立に終わり、空白が10年にも及ぶ現状に、有識者や実演家から悲痛な声が相次いだ。
有識者が基調講演
シンポでは、まず有識者2人が基調講演を行った。神奈川大建築学部の松隈洋教授は、国立劇場の本来の目的が古典芸能の保存と伝承、調査、養成であるという点を確認すべきだと強調。一方で、今回の改修計画は「突如、(民間資金を活用する)PFI方式による〝にぎわいのある文化観光拠点〟に変質した」と批判した。
伝統芸能の象徴の不在続く
早稲田大演劇博物館の児玉竜一館長は、「上演される中身が最優先事項で、建物の恒久性より古典芸能の継続と保存が守られるべきだ」と指摘。日本の劇場は、歴史的に天災や火災などで短命だったとし、「西洋の基準は当てはまらず建て替えは必須」と述べ、さらに国立劇場の空白長期化は、東京の一劇場の問題ではなく、全国の伝統芸能を象徴する存在の不在を意味し、商業ベースに乗らない演目上演を継続し、研修と資料記録の蓄積の場としての役割が重要と強調した。
また、「再開場は(2度失敗した)入札がうまくいっても、それから6~7年かかる。今からでも遅くないので、代替劇場を考えなくてはならない」と懸念した。
格調保った劇場に
基調講演に続き、歌舞伎俳優の中村萬壽さん、歌舞伎義太夫で人間国宝、竹本葵太夫さんが加わり、公開で議論も行われた。萬壽さんは「改修から建て替えへ方針転換された根拠が公開されていない。透明性ある議論が行われず、政治力が必要」と訴えた。葵太夫さんは「ざっくばらんな劇場はいくらでもできる。国立劇場は格調を保ちつつ、伝統芸能を見ていただく、胸を張って誇れる劇場であってほしい」と述べた。



