茶道裏千家16代家元・千宗室さん、エッセー集「京都の路地 まわり道」上ル・下ル刊行
裏千家16代家元・千宗室さん、エッセー集「京都の路地 まわり道」刊行

茶道裏千家16代家元の千宗室さんが、エッセー集「京都の路地 まわり道」上ル・下ル(淡交社・各1760円)を刊行した。平成21年から新幹線の車内誌「ひととき」で連載する巻頭エッセーをまとめたもので、令和6年までの計120掌編を収録する。

路地の魅力と執筆の舞台裏

「道に入った途端、先まで見通せるのは面白くないんです。行き止まりなのか、まだ先に行けるのか…。ドンツキ(突き当たり)にぶつかると、まわり道をしなければいけない。それがまた楽しい」と千さんは話す。タイトルはそんな路地の魅力に由来する。

連載が長くなったことには「まあ、よく書いてきましたね」と苦笑い。出張が多いため、執筆はもっぱらスマートフォンを使い、ほぼ完成させてからパソコンに送って最後の調整をするという。

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季節と言葉へのこだわり

短い文章でリズムよく言葉を紡ぐのは著者ならでは。名文家として知られた母・登三子さんの「自分の文章は音読しなさい」というアドバイスも影響している。「春がふくらむ」「夏に取り残される」といった季節を感じさせるタイトルが並ぶ。

「お縁起だから」は縁起事に敏感だった祖母との少年期の思い出を描く。迷いこんだ路地での不思議な体験や「物の怪」との遭遇も、ちょっと怖いがおもしろい。

変わりゆく町への思い

フランス料理「M軒」や、「酒場考」での祇園の老舗バーSなど、知られた名店がさりげなく登場するのも楽しい。一方で、変わりゆく町の姿にも一家言を忘れない。

若い頃は自転車で、最近は「長歩き」を楽しむという千さん。「静かで何もないと思っていたのですが、こんなに色とりどりの町なんだなあと。昔からの色が残っている、私にとっては街ではなく町。人間の色々な思いが雑多に混じった、そういう場所が本当の町だと思います」と語る。

町にはかつてあちこちに戦争の爪痕があった。昭和のある時期まで見かけた傷痍軍人の記憶をつづった「いくさ」は、この時期にぜひ読みたい一編だ。

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