AIが急速に進化し、「人間にしかできない」と思われてきた知的行為の多くがAIに代替されるようになった。一方、国際社会においては、世界一の大国でこれまでの常識が通用しない大統領が誕生し、世界を翻弄し続けている。未来どころか、現在を見通すことさえ難しい時代において、われわれは何を学べば良いのだろうか。
人文知が実戦的な武器に
歴史をはじめとする人文科学を学ぶことが、単に教養を身に付けるにとどまらず、変化の激しい現代社会を生き抜く上での実戦的な武器となる。それが、本書における前述の問いへの回答だ。
本書の著者は独立研究者・著作家の山口周氏と、「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」のMCを務める株式会社COTEN代表取締役の深井龍之介氏。両氏の対談形式で議論が交わされていくが、対立点は少なく、一人の著者が書いたような、まとまりある著作となっている。
ビジネス界で広がる人文知の重視
両氏ともにビジネスの世界で人文知の重要性を説くのみならず、実践もされている方々だ。一見すると、彼らのポジショントークのような本にも見受けられなくもないが、決してそうではない。最近、ビジネス系の講演会に出席すると、学者だけでなく、経営者も積極的に哲学や歴史の話をするようになっている。また、聴衆もそれを求め、そうした知識から学ぼうとしているように見える。
変化が激しい時代、人間が機械に取って代わられかねない時代だからこそ、不変の人間の営みから学ぶことが重要になる。逆説的ではあるが、それが真理であるようだ。
学びの分岐点
本書でも語られている通り、人文知を学ぶのは時間がかかり、即効性があるものではない。それを「大変だ」と思うか、「楽しみだ」と思うかは人それぞれだろう。ただ、後者の人たちこそが、これからの社会を巧みに生き抜くことができるのだろう。
本書を読んで終わりにするか、本書を入り口に本格的な学びへと移るのか、ここが最初の分岐点になるだろう。



