鳥類学者の川上和人氏が、ベン・ゴールドファーブ著、木高恵子訳の『道路をわたる動物たち』(草思社・4070円)を書評した。道路が野生動物に与える影響を解明し、緩和を図る「道路生態学」を扱った約500ページの決定版だ。
道路は野生動物の生活を分断する
ロードムービーでは道路は成長や心境の変化を暗示し、スタートとゴールを結ぶ。しかし野生動物にとって道路は生活の場を横切り分断する存在となる。
本書はまず交通事故に注目するが、それだけではない。大きな道路に隔てられれば自由に移動できなくなり、カタツムリは道を渡る途中で干からびる。車が病原体を運ぶこともあり、凍結防止用の塩で淡水湖の塩分濃度が上昇する例も紹介されている。
日本では北海道でシカ事故6700件
翻訳書にありがちな点として、紹介された事例の多くが欧米のもので、日本を含むアジアの情報が少ない。これはアジアで研究が進んでいないことが一因とみられる。
日本では北海道で昨年、シカとの交通事故が6700件あった。事故死は痛ましいが、シカが増えた結果であり、事故でシカが減少する傾向はない。沖縄ではヤンバルクイナの事故が保全上の課題となり、奄美大島では夜行性動物への影響を減らすため、生息地での夜の車利用を規制している。地域により状況は異なり、単純に総括はできない。
日本でも道路生態学を進める必要性を実感させられる内容だ。冒頭の映画は道路の先で悲劇的な最期を迎えたが、道路生態学の未来にはハッピーエンドを期待したい。



