ロシア出身のアリーナさんが、島根県出雲市の田中書道教室で書道を学びながら、日本語指導にも携わっている。7月には市内在住の外国人向け書道体験教室で初めて講師を務め、日本文化を代表する書の魅力を伝えた。
モスクワから800キロ、カザン出身のアリーナさん
アリーナさんはロシアのモスクワから東約800キロにある都市カザンの出身で、カザン連邦大学で日本語を学んだ。日本人教師が菓子や文房具、書道といった日本文化を紹介してくれたのを機に、「質の高い日本のノートに、無印良品の細いペンで、漢字を書いてみたい」と思いが募ったという。
卒業後は母校で日本語教員になり、日本での就業支援を進める会社の現地代表も務めた。ロシア人でエンジニアの夫と2023年12月に出雲市に移住した。
「ハロー、ヤポニヤ!」で日本語指導
日本語指導は、東欧の高度なエンジニアに特化した人材紹介プログラム「ハロー、ヤポニヤ!」の一環で、オンラインで週3回、1回90分の授業を半年間続ける。ロシアやキルギス、ベラルーシなどのエンジニア66人が卒業し、25人が出雲市や東京都、香川県、神奈川県などに移住してIT会社で活躍している。
書道を始めるきっかけは偶然の出会いだった。2024年3月の朝、市中心部の高瀬川沿いを散歩中に田中書道教室の看板を見つけ、その場で電話をすると、田中豊石先生(93)がすぐに招き入れてくれた。「玄関に入った瞬間、ふわーっと漂う墨の香りに心地よさを感じた」という。
「心を整える時間」としての書道
田中先生は文鎮や半紙、筆など道具の名前を一つ一つ教えてくれた。田中先生が筆を持つ姿勢や集中した表情を見ていると、「書道は字をきれいに書くだけでなく、心を整える時間だな。自分の心の道を探す意味もある」と感じた。
教室には週2回通い、手本の言葉の意味をじっくり考えてから筆を動かす。1年半かけて楷書に向き合い、現在は行書を習う。「楷書は息が止まる感じがあったが、行書は線が続いていて書いていると気持ちが柔らかくなる」という。
9月に2回目の体験教室を予定
今では書道が生活の一部だ。2年半前に田中書道教室の看板が目に入らなければ、出雲での暮らしは全く違っていたと思う。ピープルクラウドの日本人の同僚からは「アリーナの心の目が開いているから、美しいものに気付くことができる」と教えられた。
心の目が開いているかどうかは自身では分からないが、東欧から来て出雲で暮らす外国人たちにも日本の魅力を探してほしいと願っている。外国人向けの書道体験教室で講師を務めたのはそんな思いからだ。「ずっと夢を抱いていた日本で、心の目を開けて周りの美しさや繊細な魅力に気付けたなら、皆さんの生活の色がより鮮やかになるはず」。9月には2回目の体験教室を予定している。



