「デジタル敗戦」の原因は多重下請け構造、元MS開発者の中島聡氏が指摘
「デジタル敗戦」の原因は多重下請け構造、元MS開発者

ソフトウェアエンジニアの中島聡氏は、日本が主要なデジタルサービスを米国勢に取られる「デジタル敗戦」の状態にあるのは、日本のソフトウェア文化が根本的に間違っていることが最大の原因だと指摘した。その背景には、IT大手を頂点とする多重下請け構造があるという。

エンジニアの地位は「3K」とみなされる

中島氏によると、日本のIT産業では、プログラムを書くエンジニアの仕事は「きつく、給料が安く、帰れない」という「3K」だとみなされ、社会的地位も低い。一方、米国ではエンジニアの社会的地位は非常に高く、プロスポーツ選手やアーティストのように扱われ、優秀な人材は巨大IT企業から引っ張りだこで、億円単位の報酬を得ている人も多いという。

中島氏は、日本でエンジニアの地位が低くなった原因は、ITゼネコンと呼ばれる大手IT企業を頂点とする多重下請け構造にあると説明する。日本では通常、IT大手が大規模なシステム開発を請け負い、その企業のエンジニアが仕様書を書いて、プログラムは下請けに丸投げする。下請けや孫請けのエンジニアは低賃金で大量のプログラムを書き、ソフトをIT大手に納品する仕組みだ。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

自らプログラムを書かない設計者が良いソフトを生むはずがない

IT大手のエンジニアはソフトの設計図を書くだけで、自らプログラムは書かない。米国ではソフトの設計もプログラムもエンジニアが手がけるのが当たり前で、優秀なエンジニアほどそうしている。中島氏は「日本は自分で料理をしない料理長が料理のレシピを書いているような状況だ。自らプログラムを書かない者がいいソフトを設計できるわけがない」と指摘。この図式が、日本で良いエンジニアが育たない構造を生んでいるという。

この問題は20年以上前から指摘されているが、なかなか直らない。中島氏は、当事者であるITゼネコンが直す気がないからだろうと述べ、多重下請け構造を温存し、エンジニアを軽んじたツケが今の日本のソフト開発力の弱さに表れていると語る。

AI開発でも後れ、中国にも圧倒的に負ける

中島氏は、AIの開発でも日本は後れを取っており、残念だと述べる。世界中から資金や人材が集まる米国に負けるのは仕方がない面もあるが、互角に戦えるはずの中国にも圧倒的に負けているのは悲しいと語る。優秀なエンジニアの育成で負けている面もあるが、日本の大学教育がぬるま湯的で、ハングリーさがなくなっていることも大きな原因ではないかと指摘した。

個人単位では米国で通用するような優秀な日本人エンジニアはいるが、組織となると、そもそもソフトやAIの重要性を理解していない日本企業が多く、そうした人材が活躍できる場がない。中島氏は「ソフトやAIの波を日本としてどう受け止め、対処するのか。真剣に考えなければ、デジタル敗戦の次にAI敗戦が続くことになるだろう」と警鐘を鳴らす。

中島聡氏は1986年にマイクロソフト日本法人に入社し、米国本社で「ウィンドウズ95」などの基本設計を手がけた。2000年に退社後、ソフト開発企業を創業し、現在も生成AIサービスを開発するなどエンジニアとして活躍している。近著に「2034 未来予測」。米シアトル在住。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ