女子中学生野球選手の希望、地域クラブが支える。男子との接戦で手応え
女子中学生野球選手の希望、地域クラブが支える

中学校の野球部で「壁」に直面する女子選手の希望となったのは、地域のクラブチームだった。男子と接戦を繰り広げ、手応えを感じる選手たちの姿を紹介する。

地域クラブが女子選手の受け皿に

神奈川県の中学生クラブ「相模原ハイドレンジャーズ」は2023年に創設された。チームづくりに奔走した相模原市学童野球協会副会長の岡本英夫さんは、「女子が中学校で野球を続けるには男子と一緒の部活に入るか、市外の少ない女子クラブに行くしかなかった。部活に入っても、男子との体格差が逆転してなかなか試合に出られない。だから卒業しても地元で続けられるような環境を作りたかった」と振り返る。

県女子学童選抜大会で同市のチームが活躍したことで機運が高まり、その子供たちを中心にクラブが誕生した。部活動の指導をスポーツ団体や地域クラブに移す「地域展開」の先駆けとなることも目標だった。市内在住でプロ野球の中日などで内野手として活躍した田野倉利男さんに監督を頼み、活動が始まった。

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男子チームとの接戦で成長

間もなく参加した市民選手権では、中学生の男子チームとの対戦で0対0から延長での惜敗を演じ、関係者を驚かせた。「男の子と同じような指導ができるレベルの子たち。そこにハマった」と田野倉さんは振り返る。

選手たちは元プロ選手の理詰めの指導に必死に食らいつき、25年春に行われた関東・東北・北信越女子中学軟式野球大会で優勝。同年夏の全日本女子軟式野球学生選手権(中高生の部)では3位となり、創部からわずか3年で大きく成長した。

中学生が大学生を破る快挙

クラブは、中学生から大人までのチームが一緒に戦う「女子軟式野球リーグ」でも昨年、大学の強豪の日本体育大学や一般クラブを破って優勝している。日体大の青山颯斗監督は「バントでしっかり送り、打つべきところは打つ。バッテリー中心のいいチーム」と中学生の強さに驚いた。

軟式球は中学生以上は同じ規格だ。地域大会など試合数が多く、実戦慣れしている中学生が年上の世代に勝つのも不思議ではないという。

選手たちの声

相模原の1期生で、今春に中学校を卒業した平本心愛さんは学童チームで男子と一緒にプレーし、中学生で野球をやれる場所を探して悩んでいた時に地元にクラブができた。「男子と試合することもあり、負けないように力じゃなくて頭をつかって野球をやりなさいと監督に教わりました」と振り返る。

今年2月、東京都八王子市内で相模原と試合をしていた中学生チームにも女子野球に自分の居場所を見つけた選手がいた。中学校で野球部に入ったが、1年生で退部した。「同学年で女子は私だけ。男子と組んでのストレッチ体操はやりづらいし、球筋や打撃の強さも違う。食べまくったけれど自分の体格では無理だと思った」。そんな時、女子チームの存在を知った。「同じ気持ちの人がいて、女子がこんなに輝ける場所がある」と今は野球を心から楽しんでいる。

福井のクラブも接戦を経験

福井県で昨年から参戦する中学生女子軟式クラブ「福井ダイヤモンドガールズ」も、女子大会以外の公式戦に出場している。山野智千監督は「対戦相手を探して遠征が多かったが、県内なら選手の家族にも応援に来てもらえる。男子が相手でも経験を積んでレベルアップできれば」と話す。

全国大会につながる県内の地区大会、昨春の初陣は完封負けだったが、今年4月には男子チームを相手に4点差を逆転して最終回まで1点をリードし、逆転サヨナラ負けながらも大接戦を演じた。山野さんも「選手たちは男子相手でも十分に戦えることを証明してくれた」と手応えを感じている。

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女子野球の未来

少子化で国内の野球人口が減少する中で、女子の競技者は増えている。特に小、中学生で増えているが、その上の高校世代では女子軟式チームは少なくなり、硬式が増えている。平本さんも今は高校の女子硬式部で野球を続けている。

硬式でさらに自分を磨くのか、それとも軟式を続けていくのか。目指すところは違っても、女子選手たちが野球を長く続けられるように、プレーの機会をつないでいくことが大事だ。将来を見据えた女子大会の運営体制の整備も図られている。

全日本女子軟式野球連盟事務局長で、現役のプレーヤーでもある小林正代さんは「30歳を過ぎて軟式に戻ってきた子は何人も見ている。体力のあるうちは硬式で、できなくなったら軟式に帰っておいで、と思っています」と話している。

軟式球の進化

軟式野球のボールは、かつては小学生、中学生、一般用の3区分だったが、2018年から中学生用と一般用が同じ「M号」に統合され、小学生用の「J号」との2種類となった。現在使われている軟式球は7代目だ。

軟球の統一球は1938年に誕生し、現在のボールは7代目となる。高く跳ねすぎる、打撃で飛距離が出にくいなどの課題を克服するために、ゴムと薬品の配合比率を変え、ボールのディンプル(くぼみ)部分の面積を広くするなど工夫された。新球をテストした選手からは「投げやすい」「打球が伸びる」などと評価されたという。

軟式と硬式では打ち方や捕球などの基本的な動きが少し異なるが、新球は軟式で野球を始めた小、中学生が高校で硬式にスムーズに移行できるように、肩やひじへの負担がかからず、かつ「硬式の感覚に近い」ボールを目指した。

中学生が現在使うM号の規格値は、直径が72±0.5ミリ、重さが138±1.8グラムで、従来のB号に比べて重さで3グラム、大きさで2ミリほど大きくなった。

全日本軟式野球連盟の吉岡大輔事務局長は「小、中学生の体力や体格が大人に近づき、中学生だけボールを分ける必要がなくなった。また、弾む打球に上からグラブをかぶせるような軟式特有の捕球は硬式ではなじまないが、若い世代が技術移行しやすいボールに変更するという側面もあった」と話す。