視覚障害の名誉教授が「東京アプリ」問題を提起、スマホ持てぬ都民排除を懸念
視覚障害名誉教授「東京アプリ」で排除懸念

東京都が物価高対策としてスマートフォン向け公式アプリ「東京アプリ」を通じて1万1000円相当のポイントを付与している事業について、視覚障害を持つ高齢男性が今月、都や都議会各会派に「デジタル弱者が排除されている」と問題を提起する意見書を提出した。男性は「スマートフォンが公的サービスを受けるための通行手形となっており、手形を持てない都民にも目を向けてほしい」と訴えている。

ガラケーからスマホへの切り替えは困難

意見書を提出したのは、筑波大学名誉教授で都内在住の河内清彦さん(79)。河内さんは12歳の時に病気で失明し、視覚障害者の心理や行動特性を研究する視覚障害心理学を専門としてきた。

今年2月、都が東京アプリを使った生活応援事業を開始したことを知り、アプリ事務局や小池百合子知事宛てに意見書を送付。都からはコールセンターやスマホ教室の案内、障害者向け操作性の確認状況などの回答があった。しかし、河内さんは「高齢で障害のある私にはスマホはハードルが高い」と話す。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

現在、河内さんはガラケータイプの携帯電話を使用。メールはパソコンの文字読み上げ機能を利用して送受信し、高齢による難聴の進行でイヤホンを使用。手のしびれもあり、慣れないスマホへの切り替えは難しいと感じている。

求めているのはスマホ利用支援ではない

今年2月の都議会定例会では、障害や高齢でスマホからポイント申請できない人への対応策が議論され、都は本年度中に代理申請制度を導入し、対面支援も検討する方針を示した。都デジタル企画調整担当課長の大石直行氏は「多くの人に東京アプリを使ってもらえるよう広報や支援に取り組んでいる」と説明する。

しかし、河内さんは「求めているのはスマホ利用支援ではなく、障害者や高齢者などスマホを持たない人も同等に行政に参加できる共生社会の実現だ」と強調。都が掲げる「誰一人取り残されないデジタル社会」の理念に反する制度設計だと批判し、都議会各会派への意見書に加え、障害者・高齢者施策を担当する都福祉局にも代替手段の導入などを求める意見書を送付した。

河内さんは「デジタル化の推進には賛成だが、別の手段も用意しなければ、デジタル弱者が置き去りにされ、適応できる人だけが行政サービスを受けられる社会になりかねない」と危機感を表明している。

東京アプリ生活応援事業とは

東京アプリ生活応援事業は、行政手続きやサービスの一元化を目指し、都が2025年2月に提供を開始した「東京アプリ」を活用し、15歳以上の都民に1万1000円相当のポイントを付与する事業。当初はアプリ普及のため7000ポイントを付与するキャンペーンだったが、2024年11月に物価高対策として4000ポイントが上乗せされた。マイナンバーカードによる本人確認が必須で、都民約1125万人の利用を見込み、総予算は1200億円超。都デジタルサービス局によると、3月21日時点のダウンロード数は約636万件。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ