再審制度見直しで冤罪救済の機会が狭まる懸念、法制審答申に課題
司法制度において最も恐れられるべきは、誤った判決によって無実の人の命や自由を奪ってしまうことです。再審制度の見直しが進められる中、かえって誤判を正す機会が制限される事態は避けなければなりません。
法制審議会が刑事訴訟法改正要綱を答申
法務大臣の諮問機関である法制審議会は、再審制度の見直しに向けた刑事訴訟法の改正要綱を答申しました。現行の法律では、再審に関する規定が不十分であり、検察官による証拠開示についても明確なルールが定められていません。このため、再審手続きを整備するための改正が求められています。政府は、この答申を基にした改正案を現在の国会に提出する方針を示しています。
袴田事件を契機とした見直しの背景
今回の見直しのきっかけとなったのは、静岡県で発生した一家4人殺害事件です。死刑判決を受けた袴田巌さんが再審を請求してから無罪が確定するまで、実に43年もの歳月を要しました。検察側が裁判所の再審開始決定に対して繰り返し不服を申し立てたことで、再審手続きが大幅に遅延した経緯があります。このような検察による不服申し立ては、他の事件でも常態化していると指摘されています。
不服申し立て禁止の検討と反対意見
法制審議会の審議では、検察による不服申し立てを禁止する案も検討されました。しかし、検察官や学者などの委員からは、「誤った再審開始決定が是正されなくなる」といった反対意見が相次ぎました。その結果、不服申し立ての禁止は改正要綱に盛り込まれませんでした。この決定には、無実の人の名誉回復を遅らせてきた過去への十分な反省が感じられないとの批判が寄せられています。
証拠開示と利用制限に関する課題
改正要綱では、裁判所が検察に対して証拠提出を命じる義務を明文化しましたが、対象は再審請求の理由に関連する証拠に限定されています。また、再審手続きの中で開示された証拠を、他の目的で使用した場合には、拘禁刑や罰金を科す対象とすることが定められました。
袴田さんの事件では、再審審判で開示された「犯行着衣」のカラー写真が広く公開されたことで、証拠の信憑性に疑義が生じ、再審開始や無罪判決につながりました。証拠の利用に罰則を設けることは、たとえ正当な目的であっても、証拠の活用が抑制される恐れがあります。制度見直しを実効性のあるものとするためには、幅広い証拠開示とその利用を可能にすることが不可欠です。
超党派議員連盟による別の改正案の動き
政府の改正案に加えて、制度の早期見直しを求める超党派の国会議員連盟は、不服申し立て禁止や証拠の幅広い開示を盛り込んだ別の改正案を、今国会での提出を目指しています。国会は、こうした要素を取り入れることで、冤罪被害者の救済に資する法改正を実現すべきです。



