暑すぎる夏、住民の「熱意」で行政が動いた 杉並区の公園にタープ常設
暑すぎる夏、住民の熱意で行政が動いた 杉並区の公園にタープ常設

「史上最も暑い夏」が4年連続で今年もやってくるのか。厳しい暑さが「日常」となった東京23区で、屋外で強い日差しから身を守る対策が少しずつ広がっている。杉並区の都立善福寺公園では今夏初めて、大型遊具に日よけの布(タープ)が常設される。行政を動かしたのは、住民らが汗をかいて集めたデータだった。

オーストラリアの事例を参考に「実験」

「暑すぎて遊べない」。2022年9月、子育て中の住民らでつくる市民団体「善福寺どんぐり・ピクニッククラブ」の集まりで、そんな声が相次いだ。「オーストラリア・メルボルンの公園では、砂場や遊具の上にタープが張られている」。日本と現地で2拠点生活をするメンバーが、そう報告した。

親たちは動きだした。公園側に協力を求め2024年夏、遊び場に日陰をつくる社会実験「こかげハウス」を開始。当初はテントを3日間置いたが、強風で倒れるリスクや、テントの支柱が歩行の邪魔になる懸念があった。

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滑り台の複合遊具の上に14枚のタープ

そこで翌2025年夏に試したのが、伸縮性のある布製タープだった。8月1~15日、滑り台の複合遊具の上に14枚を、風が通り抜けるようにまばらに張った。支柱は遊具の中央に木製のものを置き、周りの樹木や街灯も活用した。

暑さはどれくらい和らぐか。熱中症のリスクをみる暑さ指数(WBGT)を計測すると、指数が危険域の31を超える時間帯では、タープのある場所は、ない場所よりも最大3ほど低かった。指数を最大5下げる木陰には及ばないものの、一定の効果が確認できた。

暑さ指数(WBGT)とは、気温、湿度、地面からの照り返しなど輻射熱の三つの要素を取り入れた指標。単位は度(℃)を使うが気温とは一致しない。熱中症の予防を目的に1954年に米国で提案された。指数が31以上は「危険」の水準で、28以上31未満は「厳重警戒」、25以上28未満は「警戒」、21以上25未満は「注意」。環境省熱中症予防サイトでは4月22日から10月21日まで全国の指数を発表する。

滑り台の表面温度でも「効果」

指数とは別に、滑り台の表面温度を調べると、タープ下の40度台に対し、直射日光にさらされる部分は70度近かった。

公園の利用者に実験の感想を聞くと、回答した約80人の8割がタープの効果を高く評価。「他自治体に先駆けた取り組み」「もっと広げてほしい」「ミストがあれば、なお快適」といった声が寄せられた。

気象庁によると、2025年夏の平均気温は平年値を大きく上回り、3年連続で「最も暑い夏」の記録を更新した。今夏も高温が予想され、善福寺公園では都の予算で7月20日~8月31日にタープを常設する予定だ。

どんぐり・ピクニッククラブのメンバーで、実験を主導した東京大大学院教授の中島直人さん(49)は「木陰のほうが効果は高いが、まずはタープなどで必要性を感じてもらうことが大切だ」と話す。実験を共に進めた同公園サービスセンター長の室井恵一さんは「家に閉じこもるとストレスを感じる子どもたちもいる中、一歩踏み込んだ暑さ対策につなげたい」と期待した。

品川区が全国初の「日陰戦略」を策定へ

23区では品川区は本年度、街中の日陰を増やすなどの「シェードポリシー(日陰戦略)」をまとめる。涼しく歩ける空間の整備や、民間の建物で日陰をつくる際の支援策などを検討していく。区によると、日陰に特化した総合戦略は全国の自治体で初めて。

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参考にするのは海外の先進都市の事例だ。夏の気温が40度を超えるスペイン・セビリアでは日陰戦略をつくり、街路への日よけ設置や植樹を進める。米ニューヨークなどは、樹木の枝葉で覆われた土地の面積割合を示す「樹冠被覆率」の上昇を目指す。

区はこれまで公園へのミスト設置や緑化などに取り組んできたが、「猛暑は区民の命や健康を脅かす恒常的なリスク」と捉え、対応を強めることにした。

中野区では区民らがグループ「みんなの木陰@中野」をつくった。昨夏に区内で木陰と日なたの温度差を調べ、区に樹冠被覆率の目標設定などを求めた。今夏も調査し、樹木剪定の課題なども学ぶ。メンバーの韮沢進さん(71)は「維持管理のコスト削減のため樹木を安易に伐採することは課題だ」と話した。