高校生若女将、廃業危機の温泉宿を再建へ 高崎・湯端温泉で奮闘
高校生若女将、廃業危機の温泉宿を再建 高崎

群馬県高崎市吉井町多比良の温泉旅館「湯端温泉」で、17歳の高校生、桑子友菜さんが若女将として奮闘している。廃業の危機にあった家業の宿を引き継いだのは昨年春。中学時代は自律神経の不調で不登校を経験するなど苦労もしたが、進学先の高校で得た学びを武器に、小さな宿の立て直しに挑んでいる。

家族経営の宿、再び休業の危機

湯端温泉は1971年に友菜さんの曽祖父が創業した。当時は周辺に個人旅館が点在したが、現在では吉井町内で唯一の温泉旅館となっている。2006年にいったん閉鎖されたものの、2012年に友菜さんの両親、済さん(41)と真澄さん(39)が再開し、家族で守ってきた。

しかし近年は経営環境が厳しさを増していた。新型コロナウイルス禍を経て、周辺には格安で宿泊できる施設も増加。済さんはやむなくパソコン修理の別事業に力を入れるようになり、旅館は2024年11月から再び休業。廃業の可能性も現実味を帯びる中、友菜さんは「大好きな旅館をなくしたくない」と継承を決意した。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

不登校を乗り越え、起業への目覚め

中学時代は医師を志し勉強に打ち込んでいたが、起立性調節障害を発症。朝起き上がれず、学校に通えない苦しい日々が続いた。「人生終わりだな、と思った」と振り返るほど、つらい時期だった。

進学した通信制のN高等学校(高崎キャンパス)で、起業や地域活動に取り組む先輩たちに出会い、「高校生だから無理」という思い込みが崩れた。マーケティングやウェブ制作も学び、自分も何かに挑戦したいという気持ちが芽生えた。

背中を押したのは、旅館が休業中に参加した起業家らとの交流会だった。自己紹介で実家が温泉宿だと話すと、「休んだままではもったいない」と声をかけられた。帰りの車中で真澄さんに「私、温泉やりたい」と伝え、家業を継ぐ決意を固めた。

サイト刷新と貸し切り風呂の価値訴求

2025年5月の再開後、まず手がけたのが宿のウェブサイトの見直しだった。学校で学んだ知識を生かし、貸し切り風呂や利用しやすい料金が伝わるよう内容を刷新。予約サイトの口コミも参考に、アメニティーの充実や館内設備の改善も進めた。「ホームページを見て予約した」という声も増えたという。

売り方も変えた。これまでのように安さだけを前面に出すのではなく、貸し切り風呂の価値を打ち出した。家族連れが周囲を気にせず入浴できるほか、手術痕のある人やトランスジェンダーの人など、大浴場に入りづらさを感じる人にも利用してもらえる。ベビーチェアやベビーソープも設置し、家族連れにも配慮した宿づくりを進めている。

母と二人三脚、成長する若女将

現在は真澄さんと2人で切り盛りしている。接客や清掃、予約管理に加え、宿泊プランづくりや掲示物のデザインも担当。真澄さんは「最初は『何をしたらいいか』と聞いていたのが、今は『こうしたい』と自分で考えて動くようになった」と成長を喜ぶ。宿には「若女将に会いに来た」と訪れる客や、「応援したい」と県内から泊まりに来る客も増えているという。

将来は大学で学び、地域に貢献

友菜さんは昨年度、知事の相談役として政策提言する県の「高校生リバースメンター」としても活動し、温泉文化の発信などを提言してきた。将来は大学で地域政策や観光を学び、その知見を宿の経営にも生かしたい考えだ。「一人一人に向き合って、おもてなしをしたい。お客さまが喜んでくれる場所を守っていきたい」と前を向く。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ