最高裁判決を国際水準へ 元判事と憲法学者が語る改革の必要性
最高裁判決を国際水準へ 元判事と憲法学者が語る改革

最高裁判所の判断を国際的な人権水準に引き上げるにはどうすればよいのか。元最高裁判事の泉徳治弁護士と、憲法・国際人権法が専門の明治大学教授江島晶子氏が、制度改革の必要性について語り合った。

旧優生保護法違憲判決の意義と課題

今年は日本国憲法公布から80年、国際人権規約(自由権規約)が国連で採択されて60年の節目にあたる。人権を守る砦である最高裁は、その役割を十分に果たしているのだろうか。

江島氏は、2024年7月の最高裁判決が重要なヒントを与えたと指摘する。この判決は、障害者に不妊手術を強いた旧優生保護法を立法当時から違憲と判断。賠償請求権が不法行為から20年の除斥期間経過で消滅したことについて、「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない」と述べ、被害者救済を図った点で画期的だった。

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しかし、救済にあまりに時間がかかりすぎた。司法だけでなく、人権侵害を救済する仕組みを社会全体でどう整えるかという問題を投げかけている。

旧優生保護法問題からくみ取るべき教訓

泉氏は、現在振り返ると、最高裁がより迅速に対応できる制度設計が必要だったと述べる。例えば、除斥期間や消滅時効の適用について、立法時に人権侵害の重大性を考慮する仕組みがあれば、被害者の長期にわたる苦痛を軽減できたかもしれない。

また、国際人権基準では、国家は実効的な救済を提供する義務があるが、日本の司法制度はその点で不十分だと泉氏は指摘。最高裁判事の任命プロセスや、裁判官の国際人権法に関する研修の充実が求められる。

江島氏も、自由権規約委員会などの国際機関から日本が繰り返し勧告を受けている事項として、国内人権機関の設置や個人通報制度の導入を挙げる。これらが実現すれば、最高裁の判断が国際水準に近づく可能性がある。

司法制度改革の具体的な方向性

両氏は、最高裁の判断を国際水準にするためには、以下のような制度改革が必要だとの認識で一致した。

  • 最高裁判事の指名プロセスの透明化:現在は内閣が指名するが、国民の意思を反映させる仕組みが乏しい。例えば、国会の同意を得るプロセスを強化する。
  • 国際人権法の積極的な適用:国内法の解釈において、国際人権基準をより重視する姿勢が求められる。最高裁が国際判例を参照する頻度を増やすべきだ。
  • 救済手段の多様化:除斥期間や時効の例外規定を拡充し、重大な人権侵害には長期にわたる救済を可能にする。
  • 司法アクセスの改善:訴訟費用の負担軽減や、弁護士費用の公的支援など、被害者が裁判所にアクセスしやすい環境を整える。

泉氏は、最高裁が「憲法の番人」としての役割を十全に果たすためには、裁判官自身が国際人権感覚を磨くことが不可欠だと強調。江島氏も、日本が批准している国際人権条約の国内実施を強化する立法が必要だと述べた。

今回の対談は、東京都中央区で行われ、上田幸一氏が撮影した。

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