図書館を舞台にしたアートパフォーマンス「MANUAL」が山口市で上演
カナダを拠点とするアーティスト、アダム・キナーさんとクリストファー・ウィレスさんが手がけたアートパフォーマンス「MANUAL」が、山口市立中央図書館で上演されました。このパフォーマンスは、図書館を舞台に、参加者がパフォーマー(案内人)と1対1で行動を共にし、普段とは異なる感覚を体験しながら、図書館や本の奥深さと向き合う試みです。
公共空間の可能性を探る国際的なプロジェクト
「MANUAL」は、公共空間のあり方やその可能性への関心から、2022年にカナダで初演されました。以来、英国やタイ、ノルウェーなど世界各地で上演されており、今回、山口市の山口情報芸術センター(YCAM)が招請しました。パフォーマー役と一般参加者を市民から募り、1月24日から2月8日の間に開催されました。
記者が体験した約1時間の感覚的な旅
キナーさんらが来日していた初日、記者もキナーさんらによる回を体験しました。図書館前のベンチで導入役のキナーさんと待ち合わせる場面から始まり、キナーさんから空の広がりや芝生で遊ぶ子どもたちといった日常の風景に注意深く目を向けることを促されました。
館内に入ると、音に耳を澄ます時間が設けられました。新聞をめくる音、本を棚に戻す音、子どもらの声など、静寂のイメージと裏腹に、図書館が多様な音に満ちた場だと気づかされました。
目を閉じるよう促され、しばらくして開くと、キナーさんが去っており、この回のパフォーマーを務めたダンスアーティスト、ハンナ・シビル・ミュラーさんに代わっていて驚きました。
目を閉じた記者の膝に本がそっと置かれてその重みを感じたり、様々な人の手、森、空などの写真を一緒に見たり、イヤホンから流れる山口で収録された音を聴いたりしました。また、「私は、そのイメージを動きのある、手触りを伴うものにしたかった」といった言葉をミュラーさんと一緒に朗読しました。
図書館の新たな側面を浮き彫りにする体験
約1時間のパフォーマンスは決して派手ではなかったものの、普段は気にとめないような行為を一つ一つ意識しながら行い、感覚の変化を重ねることで、図書館が単に読書や調べごとをする場所ではなく、様々な感覚を体験できる、奥深く特別な場所に感じられました。
キナーさんは図書館を「誰もが受け入れられ、大切にされてきた神聖な公共空間」と語ります。しかし、北米では予算削減の一環で公共施設の廃止・再編が行われており、公共空間は常に政治的な場でもあると指摘します。「だからこそ、人々に開かれた健全さを祝福したかった」と語りました。
福岡市総合図書館で殺人未遂事件が起きるといった痛ましい事例もある中、本公演は、当たり前に思える公共空間の尊さも静かに伝えていました。このアートパフォーマンスは、図書館という場の多様な可能性を再認識させる貴重な体験となりました。



