介護事業者「孫の手」が東京プロマーケットに上場 創業25年の節目に新たな挑戦へ
群馬県太田市を拠点とする介護事業者「孫の手」が、この3月に東京証券取引所の「東京プロマーケット」への上場を果たした。同社は群馬、栃木、埼玉の3県で介護事業を展開しており、創業から25年を迎える節目での上場となった。
自宅一室から始まった介護事業の軌跡
2001年2月、理学療法士としてキャリアを積んできた浦野幸子社長(56)は、みどり市の自宅の一室で「孫の手」を創業した。当時はわずか4人でのスタートだったが、現在では従業員426人、20拠点30事業所を擁する規模にまで成長を遂げている。
浦野社長は介護保険制度が始まった2000年当時、30歳だった。「在宅サービスの需要が広がる時代が来る」と先を見据え、既存の医療・介護組織における縦割り構造に疑問を感じていたことから独立を決意したという。
創業当初は無名の小さな会社として苦労も多かったが、3カ月後には訪問看護ステーションを開所。利用者からの「いいデイサービスがない」「きちんとリハビリをしてくれる施設がない」という声に応える形で事業を拡大していった。
売上高900万円から約26億円への成長
現在では通所介護や居宅介護支援、ショートステイ、サービス付き高齢者向け住宅など多様な事業を展開。売上高は創業時の900万円から約26億円にまで拡大した。
浦野社長はこの成長について「規模拡大をひたすら追求してきたわけではない」と語る。「基本に戻ってやっていくこと。その結果が売り上げにつながっただけ」と、介護の本質を見失わない経営姿勢を強調する。
同社が重視するのは「人となりが大事」という理念だ。食事介助で口に運ぶだけなら機械でもできるが、「今日は暖かいですね」と一言添えることで相手の心の開き方が変わると考える。人の笑顔を引き出せる介護を追求してきたという。
上場は通過点 社会全体へのメッセージ発信へ
上場初値は469円だったが、浦野社長は今回の上場が資金調達が目的ではないと説明する。会社としての信用力や認知度の向上、経営基盤の強化が主な狙いだ。
さらに重要なのは、介護や障害、高齢化の課題をより大きな社会の場で発信し、他業種ともつながる機会を増やすことだと語る。これまで地域の一事業者として語ってきた課題も、「場」に出ることで社会全体に問いかけやすくなると考えている。
「誰もが年を取り、いつか弱くなる。その時に安心して、気持ちよく生きられる社会をつくれるか」と浦野社長は問いかける。変えたいのは介護業界の経営のあり方であり、介護そのものの見られ方でもあるという。
「上場がゴールではない。社会を変えていきたいんです」と力強く語る浦野社長。創業25年を迎えた「孫の手」は、新たなステージへの挑戦を始めている。
東京プロマーケットとは
東京プロマーケットは東京証券取引所が運営する、機関投資家など「特定投資家」向けの株式市場。一般の投資家は参加できない。前身の「TOKYO AIM」として2009年6月に開設され、2012年7月に現名称となった。
プライム、スタンダード、グロースに比べて上場基準が比較的柔軟で、中小・成長企業が信用力や知名度を高め、将来の一般市場上場への足がかりとするケースが多い。群馬県内の企業が東京プロマーケットに上場したのは、「孫の手」が初めてとなる。



