連載「Sundayマネー」では、定年を控えた60代女性がSNS型投資詐欺で3000万円以上を失った事例を紹介します。被害者は長年の公務員生活で金融知識が乏しく、定年後の収入源を模索する中で巧妙な罠に陥りました。
投資勉強中の女性を狙った詐欺の手口
都内在住の60代女性は、公務員として長年働いてきましたが、お金に関する関心や知識はほとんどありませんでした。定年が迫り、年金受給までまだ時間があるため、仕事以外の収入が必要と考え、投資の勉強を始めました。SNSで情報収集し、つみたてNISAも1年前に始めたばかりでした。
そんなある日、画面に表示された「優良株」案内の広告を軽い気持ちでタップしたところ、LINEの投資グループに招待されました。グループ内では、日々の為替レートや経済ニュースに加え、「先生」による株取引の解説や指導が行われ、参加者たちは「爆益」を上げたと称する投稿や、高級ステーキを楽しむ日常を報告。活発なやり取りが毎日続き、「今はプレミアム相場」「先生のおかげで富裕層の仲間入り」といった言葉が飛び交っていました。
女性は「こんな世界もあるのか」と興味を持ち、約1カ月間様子を見守りました。そして心がざわついたのは、先生の投稿が目に留まった時です。「グループ内で一度も取引をしていないあなたは損をしている」という内容に、焦りと期待が入り混じりました。
巧妙な人間関係を利用した詐欺
滋賀大学の島田貴仁教授(犯罪予防・環境心理学)は、この手口を「金銭欲につけこむというより、人間の関係性を利用した詐欺」と分析します。非常に丁寧な言葉遣いで関係を築き、「迷うのは当然です」「一緒に次のステップを」と寄り添うように心理的距離を縮める点が特徴的だと指摘します。
女性はその後、指示に従って少額の投資を始め、最初は利益が出たように見せかけられました。しかし、徐々に金額を増やすよう促され、最終的に1週間余りで預金や退職金など総額3000万円以上をだまし取られました。被害に気づいた時には、すでに連絡が取れなくなっていました。
被害防止に向けて
女性は「私の体験が被害防止に役立てば」と取材に応じ、同じような被害に遭う人が減ることを願っています。SNS型投資詐欺は年々巧妙化しており、特に投資初心者や高齢者が狙われやすいとされています。
専門家は、次のような注意点を挙げています。
- 「必ず儲かる」「簡単に高配当」といった甘い言葉に惑わされない
- 知らない人からの投資グループへの招待は断る
- 投資の勧誘を受けたら、家族や金融機関に相談する
- 「先生」や他の参加者の実績をうのみにしない
定年を機に資産運用を始める方は、信頼できる金融機関や公的な相談窓口を利用し、慎重に行動することが大切です。



