イスラム教の戒律に沿ったハラル対応の食品で、輸出に商機を見いだす企業が増えている。イスラム圏の人口は世界人口の4分の1、約20億人に上る。紛争などのリスクはあるものの、今後の人口増と経済成長も見込まれ、輸出先として期待が高まっている。
常陸牛の輸出が過去最高を記録
茨城県のブランド黒毛和牛「常陸牛」は、2025年度の輸出が前年度比3倍超の約173トンと過去最高を記録した。ハラルに対応し、サウジアラビアなどへの輸出を開始したことが大きな要因だ。
人口減少で国内市場が先細る中、生産者らで作る茨城県常陸牛振興協会は、和牛の需要があるものの、ハラルにのっとって処理をした牛肉しか提供できないイスラム圏に注目。食肉処理は、日本国内の数少ないハラル対応の食肉処理場の中から、神戸市の施設に依頼した。
施設までトラックで牛を運び、インドネシアやマレーシアの政府が発行したハラル食肉処理の免許を持つイスラム教徒たちが、アラビア語で「アッラーの御名において、アッラーは偉大なり」という祈りの言葉とともに、と畜をしている。
醤油やホタテも認証を取得
1895年創業の三重県伊賀市の「福岡醤油店」は国内市場の縮小に危機感を抱き、10年ほど前からハラル認証を受けた醤油や焼き肉のタレ、めんつゆをマレーシアとシンガポールに輸出している。
醤油は発酵過程で微量のアルコールが生じるが、同社は通常より長時間加熱するなどして、発生するアルコールの度数を下げている。ハラル以外の原料や食品が混入しないように専用の流し台や調理器具を使って製造。食品や化粧品のハラル認証発行を行う「日本アジアハラール協会」の認証を取得した。
青森県八戸市の企業「エスディハチカン」は、2022年に陸奥湾産のボイルホタテで同協会の認証を取得。同社によると、ホタテはハラル対応の処理をする必要はないが、多くの人に安心して食べてもらうことを期待し、認証を取得した。マレーシアへの輸出実績があるが、今後、他のイスラム諸国にも拡大させたいという。
イスラム教徒人口は約20億人に
米世論調査会社ピュー・リサーチ・センターの推計では、イスラム教徒人口は20年までの10年間で3億4700万人増加。世界人口の4分の1を占める約20億人に達した。
ハラル認証取得や輸出の支援に取り組む「ハラル・ジャパン協会」(東京都)の佐久間朋宏代表理事(61)は「イスラム諸国は今後の経済成長が期待できる。日本企業はぜひハラルへの理解を深め、輸出にチャレンジしてほしい」とする。
ハラルはアラビア語で、イスラム法によって「許されたもの」を意味する。豚肉やアルコール飲料は「ハラム」(許されないもの)とされる。イスラム教徒以外が多い国では、ハラル認証機関が認証することで、イスラム教徒はハラル食品と判断できる。認証の対象は原材料、加工法、包装、貯蔵、物流、陳列など多岐にわたる。