米国の製鉄大手USスチールが手放した、創業100年を超えるセルビアの製鉄所を中国企業が買収した。首都ベオグラードに近いスメデレボにあるこの製鉄所は、中国国有企業の河鋼集団(河北省)が2016年に引き受けた。当時、5千人の従業員を抱え、赤字が続いていたという。
投資額は約4600万ユーロ
投資額は約4600万ユーロ(約83億円)。世界5位(25年)の粗鋼生産量を誇る河鋼集団にとっては、大した額ではないとされる。
買収決定直後、セルビアのブチッチ大統領(当時首相)は中国の習近平国家主席の訪問にあわせて、そろって現場を視察した。「破産から多くの家族と地域を救い出した」と感謝した。
住民からは環境懸念の声
地元政府などによれば、製鉄所は生産力を取り戻し、欧州各国を中心に輸出できるようになった。ただ、そばに実家がある調理師のネナド・コスティッチさんは「政府や工場は空気が良くなったと言うが、排出物で家や車が赤っぽくなる」とこぼす。
環境改善や情報公開を求める市民団体「砦(とりで)運動」代表のニコラ・クルスティッチさんは「中国企業を批判すると、ブチッチ政権に近いメディアから米国の手先だと批判される」と憤る。
セルビアは中国と「鉄の友情」を掲げる関係にあり、今回の買収は中国企業の存在感を示す「ショーケース」とも言える。投資が地域にもたらす恩恵と摩擦、民主主義や環境との向き合い方を問いかけている。



