G20入り目指すポーランド、GDP1兆ドル超え…米国が首脳会議招待、日本企業進出相次ぐ
G20入り目指すポーランド、GDP1兆ドル超え…日本企業進出相次ぐ

中東欧の大国ポーランドが経済規模で世界トップ20に躍進している。主要20か国・地域(G20)の議長国である米国は12月の首脳会議にポーランドを招待した。ポーランドはG20入りに意欲を示している。日本企業も旺盛な内需や高度なIT人材、隣接するウクライナの復興需要を見据え、相次いで進出している。

GDPがスイスに肉薄、購買力平価では日本上回る見通し

1日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議に、ポーランドはゲスト国として参加した。ポーランドの地元メディアによると、ドマンスキ財務・経済相は世界経済の議題で、米国から議論を主導するよう求められた。「600億ドル(約9兆2300億円)の中央計画経済から、1兆ドル(約154兆円)を超える自由市場経済へ転換した」などと自国経済の発展を紹介したという。ポーランドは1989年に社会主義体制が転換している。

IMF(国際通貨基金)によると、2025年に名目国内総生産(GDP)で1兆ドルを突破し、世界20位のスイスに肉薄している。28年にはスイスを上回る見通しだ。各国の物価水準を勘案して調整した「購買力平価」ベースでは、国民1人当たりのGDPは約5万9800ドルで今年にも日本を上回ると予測されている。

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欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会は、ポーランドについて、26年の経済成長率は3.5%と高い伸び率を予測。ドイツは0.6%、フランスは0.8%などと主要国よりも高く、EU全体の1.1%を大幅に上回る。

トランプ米大統領との蜜月関係、G20加盟に意欲

「欧州の成長エンジン」として存在感を高めるこの国に、トランプ米大統領も注目している。ロシア産の天然ガスに代わり、米国産の液化天然ガス(LNG)の受け入れや、米国企業によるポーランドでの原子力発電所建設など経済的な結びつきを強化する思惑がある。ポーランドは国防費の支出も多く、北大西洋条約機構(NATO)の東方防衛において最前線の役割も期待されている。

さらに、ナブロツキ大統領は「ポーランド第一」を掲げる保守派だ。元アマチュアボクサーの歴史家で、政治経験はないという異色の経歴を持つ。トランプ氏を敬愛し、両者は蜜月関係にある。25年9月、ナブロツキ氏はホワイトハウスを訪問した際、トランプ氏からG20首脳会議の招待を受けた。

ナブロツキ氏は「ポーランドと米国はこれまでで最高の状態だ」とし、「(G20の)永続的な地位を確保できるよう、最大限の努力を尽くさなければならない」とG20加盟に意欲を隠さない。トランプ氏は、G20メンバー国の南アフリカは「白人を迫害している」などと主張して、事実上排除している。その代わりにポーランドを受け入れることに前向きだ。

日本企業の進出、ユニクロやゼンショーなど拡充や投資

そもそもポーランドは、自動車大国・ドイツに隣接する立地が強みで、自動車部品など関連企業が集積している。04年のEU加盟後、域内での関税が無税となり、自動車関連を中心に外国企業の進出が相次いだことに加え、インフラ整備などで巨額のEU資金が流れ込んで、高成長を支えている。

人口約3700万人。EU域内で5番目に大きく、堅調な内需に日本企業も熱い視線を注いでいる。ポーランド政府統計によると、25年の平均月収は約8900ズロチ(約37万円)とここ10年で2倍強になり、所得水準が大幅に上がった。

ワルシャワで麺料理店を経営する松木平さんは「開店時の10年ほど前に比べ、中間層がかなり分厚くなっている。若い男女が1人で2000円前後のうどんセットをどんどん注文している」と驚く。

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ユニクロは25年10月、ワルシャワ市内の期間限定店舗の売り場面積を1.5倍以上に拡張し、常設店とした。国内2店舗目だ。広報担当者は「ベーシックなデザインに加え、品質と手頃な価格が好まれ、想定以上の売れ行き」と手応えを語る。今年4月上旬に店舗を訪れると、男性向けジーンズは約230ズロチ(約1万円)と日本の倍程度だが、多くの客が手にとっていた。

国内の旺盛な消費需要を取り込もうと、ゼンショーホールディングス(HD)も3月、ポーランドのすしの製造卸を買収すると発表した。一方、セブン&アイ・ホールディングスは7月、ポーランドのコンビニエンスストア最大手への出資検討を発表したが、最終的に株式を持つ売主との協議で合意できなかった。

欧州最大規模のIT人材、トヨタも開発拠点を開設

さらに、ポーランドが注目されるのは、高度なIT人材だ。米オープンAIの共同創業者の一人も同国出身者。多数のAI技術者を輩出し、関連する新興企業も続々と生まれている。

ポーランドのIT人材紹介会社「ドットリンカーズ」のカミル・スウォバツキ最高経営責任者(CEO)兼共同創業者は「伝統的に数学や科学分野の教育が盛んで、ポーランドは欧州で最大規模のIT人材を抱える」と強調する。同社によると、中堅のソフトウェア開発者で、ドイツや米国に比べて、賃金は半分ほどで済むという。

トヨタ自動車の欧州法人トヨタ・モーター・ヨーロッパは4月、ポーランドにソフトウェア開発拠点「トヨタ・デジタル・ハブ」を開設したと発表した。拠点では、約200人の技術者が欧州のトヨタ車とレクサス車向けに、スマートフォンで遠隔からでも車両を操作したり、状況を確認したりできるアプリの機能を拡充する。これらを支えるクラウド基盤やサイバーセキュリティー機能も開発する。ティエリー・ボワテル副社長は「高度な技能を持つ専門家が豊富に存在し、一流の工科大学が数多くある」と説明する。

ウクライナ復興需要、内政のねじれや労働力不足の懸念

隣接するウクライナでは、復興需要は90兆円以上と試算され、日系企業も復興拠点としてポーランドに高い関心を寄せている。外務省によると、進出する日系企業の拠点数は25年で392。スペインにある366拠点を抜き、欧州で6位に浮上した。412拠点のイタリアを抜くのも時間の問題とみられている。国際協力銀行も日系企業の進出支援に向け、今年3月末に事務所をワルシャワに新たに開設した。

もっとも、ポーランドでは、ナブロツキ氏と、親EUでリベラルな首相と政治的立場が異なり、内政でのねじれは懸念されている。約100万人のウクライナ避難民は貴重な労働力となっているが、ロシアによる侵略が終結後に帰還して働き手が不足する恐れも出ている。