インボイス3年、免税事業者の声優に「手数料」負担 控除率引き下げで不安も
インボイス3年、免税事業者の声優に「手数料」負担 控除率引き下げで不安も

取引先に正確な消費税率や税額を伝える目的で始まったインボイス(適格請求書)制度は、10月1日で3年となった。取引先から不利な条件を求められるという懸念は、当初からフリーランス事業者を中心に語られてきた。取引環境が変わったという人もいる。

報酬から引かれる「手数料」2割

東京都内に住む声優の女性が、報酬から「手数料」を引かれるようになったのは、インボイス制度が始まって間もないころだった。その額は、報酬に含まれる消費税分の2割相当。たとえば報酬が11万円だとすると、消費税相当額(1万円)の2割の2千円だ。この扱いは「暫定的に」、2026年9月までとされた。

女性は年間の売り上げが1千万円以下で、消費税の納税が免除される免税事業者だ。消費税は、売り上げに含まれる税額から、仕入れ時に払った税額を引き、差額を納税する仕組みになっている。インボイス制度が始まり、仕入れ時の税額を引く(控除)には、取引先が発行するインボイスの保存が必要になった。

しかし、女性のような免税事業者はインボイスを発行できないから、取引先は仕入れ時の税額分を控除できなくなってしまう。そこで政府は、免税事業者からの仕入れでも、税額相当分の8割を控除できる仕組みを採り入れた。2026年9月末までの激変緩和策とされた。

「仕事がなくなれば生活もできなくなる」

インボイス以前は税負担ゼロだった女性は、契約先に「2割」を新たに払う形になった。その名目も詳しく聞かされていない。インボイス開始で増えた契約先の負担の肩代わりではないか――。そんな疑問を抱いても、女性は契約先に尋ねようとは思わない。「面倒な人だと思われて、次から仕事の声がかからなくなるのが一番怖い。仕事がなくなれば生活もできなくなる」と話す。

女性への仕事を決めるのは、いつも発注する側の契約先。20本以上の月もあれば、数本のこともある。「仕事をもらう側は、仕事を要求できる立場ではない。個人事業主の声優は本当に弱い立場です」と語る。

年間の売り上げが1千万円未満でも、税務署に申請して納税義務のある課税事業者になれば、インボイスを発行できるようになる。実際、女性の周りでも、取引先の求めで課税事業者になった声優もいる。中には、売り上げ200万円ほどの人もいるという。

控除率引き下げで広がる不安

それでも、女性は課税事業者になるつもりはないと話す。消費税を納税すれば、手取りが減るかもしれない。税務申告を税理士に頼む負担も重い。

ただ、国の激変緩和策は10月から、控除率が8割から7割に下がった。契約先の負担増につながりかねず、どのような取引条件を突きつけられるのか、不安で仕方がないという。

一方、インボイスを機に、取引先との関係を見つめ直した人もいる。横浜市戸塚区の配管工、菅野…(続きは有料記事)