徳島工業短大、クラシックカーで整備士の魅力発信 担い手減少に歯止めを
自動車整備士の担い手が全国的に減少する中、四国で唯一整備士を育成する徳島工業短期大学(板野町)が、貴重なクラシックカーを活用した独自の取り組みで志願者獲得に奮闘している。同短大では、1912年式の「T型フォード」や1960年代のメルセデス・ベンツ「ウニモグ」など歴史的な名車を教材に、自動車整備の基礎技術とその背景を学ぶプログラムを展開。少子化や重労働というネガティブなイメージの払拭を目指す。
歴史的名車が並ぶガレージで実践授業
同短大のガレージには、自動車史に名を刻む貴重な車両が保管されている。中でも米フォード・モーター社が開発した1912年式のT型フォードは、現代の自動車技術の礎となったモデルだ。特別講師として招かれた石井町の自動車修理業、元木和豊さん(73)は、放課後の時間を利用して学生たちにこれらの車両の取り扱い方や当時の社会背景を伝授。「当時は舗装された道が少なく、わざわざ吉野川橋まで試走に行っていたんよ」と、自動車が普及し始めた時代の様子を生き生きと語る。
自動車工学専攻科2年の男子学生(22)は「現代の車の基礎になった技術や背景を学ぶことができる」と授業の意義を強調。自動車工業学科1年の男子学生(19)も「貴重な車に触れられることが入学の動機の一つになった」と振り返り、クラシックカーが若者の関心を引く有効なツールとなっていることを示した。
整備士志望者が半減 全国的な危機
1973年に設立された同短大は、主に自動車整備士を目指す高校生が県内外から入学。2024年度には1級と2級の自動車整備士資格の合格率100%を達成し、設立以来約4000人の整備士を輩出してきた実績を持つ。しかし、少子化の進行と整備士業界に対する「重労働」というイメージから、志望者の減少に歯止めがかからない状況だ。
具体的には、2018年度に72人いた整備士志望の入学者が、2025年度には42人まで減少。全国的に見ても、日本自動車整備振興会連合会(東京)によると、2022年度の整備士資格試験申請者数は約3万9000人で、ピークだった2000年代から3万人以上減少している。同連合会の担当者は「ベテランの世代が退職すれば、整備工場が減り、車検や修理の『空白地帯』が生まれる可能性がある」と強い懸念を示す。
イベントや出前授業で裾野を拡大
こうした危機感から、同短大では積極的なイメージアップ策を展開。クラシックカーの愛好家を招待するイベントを開催し、グラウンドに並ぶ珍しい車を目当てに昨年は約2000人が来場した。2024年4月には、このイベントで縁ができた元木さんを特別講師として正式に招へい。元木さんは高校卒業後に徳島市内の修理工場で技術を磨き、30歳で独立。石井町で自動車修理業を営みながら旧車を収集してきた経験を、次世代育成に活かしている。
高橋秀成広報・地域連携課長は「整備士は生活に不可欠な車を支え、ドライバーらの命を預かる責任のある仕事。整備から接客までの一連の流れを担当できるやりがいも伝えていきたい」と、業界の社会的意義を強調する。
県内の関係機関も連携して担い手確保に取り組む。徳島県自動車整備振興会(徳島市)では、2019年頃から希望する小学校などに出前授業を実施。点検体験などを通じて子どもたちに自動車への興味を持ってもらう試みだ。また、県立南部テクノスクール(阿南市)では、自動車以外に農業や建設機械の整備技術を学べる課程を新設する計画で、志願者の裾野拡大を図っている。
徳島工業短期大学の挑戦は、単なる志願者増加だけでなく、自動車整備という職業の価値そのものを再定義する試みとして注目される。歴史的名車を通じて技術の継承と革新のバランスを学ぶ学生たちが、未来のモビリティ社会を支える担い手として成長することが期待されている。



