豊田自動織機、6月に非上場化へ トヨタグループのTOB成立で中長期投資を加速
豊田自動織機6月非上場化 TOB成立で中長期投資加速

豊田自動織機、6月に非上場化へ TOB成立で新たな成長段階に

豊田自動織機は、トヨタ自動車グループによる株式公開買い付け(TOB)の成立を受け、6月にも上場廃止となる見通しです。これにより、短期的な利益を求める投資家の声に左右されない環境に身を置き、中長期的な成長を目指す体制が整います。トヨタグループでは、株式の持ち合い解消を進める資本戦略的な意義も大きいとされています。

TOB成立と価格引き上げの経緯

豊田自動織機に対するトヨタ陣営のTOBは、物言う株主(アクティビスト)との攻防の末、3月23日に決着しました。豊田自動織機は、5月中旬をめどに開催する臨時株主総会で株式の非公開化に向けた議案を諮り、その後、東京証券取引所プライム市場と名古屋証券取引所プレミア市場で上場廃止となる見通しです。

トヨタ陣営がTOBを発表したのは2025年6月で、当初はTOB価格を1株1万6300円に設定しました。しかし、豊田自動織機が保有する資産価値の上昇を反映し、今年1月に1株1万8800円に引き上げてTOBを開始しました。

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この構想に対し、アクティビストとして知られる米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントは「TOB価格が低い」と反発し、約7%保有する豊田自動織機株を武器に圧力を強めていました。トヨタ陣営は、エリオットを含む株主らと260回以上協議し、最終的には1株2万600円にTOB価格を引き上げて合意を取り付けました。

2度にわたるTOB価格の引き上げにより、買収総額は当初の想定より1.2兆円多い5.9兆円に膨らみ、日本企業間のTOBでは過去最高額となりました。トヨタとトヨタの豊田章男会長、トヨタ不動産がTOBを担う新会社に総額約1兆円を出資し、大半は金融機関からの融資を活用する形です。

非上場化によるメリットと成長戦略

豊田自動織機は、工場や倉庫で使われるフォークリフトの世界最大手であり、トヨタ向けにはエンジンや一部の完成車を供給しています。非上場となれば、短期的な株主還元を求める投資家に対応する必要がなくなり、物流拠点の自動化など将来に向けた事業に打ち込める環境が整います。トヨタ幹部は「中長期的な利益のために積極的に投資できる」と意義を語っています。

トヨタグループでは、長年の課題だった株式の持ち合い解消が進むメリットもあります。源流企業の豊田自動織機は、歴史的経緯からトヨタの大株主で、デンソーやアイシンなどの株式も保有しています。豊田自動織機は敵対的買収の標的になるリスクを抱えていたほか、事業の成長に使える資金をグループ企業の株式として眠らせているという批判もありました。

今後は、トヨタグループの下、非公開化した豊田自動織機がどのような成長戦略を描くかが注目されます。自動車業界に詳しい東海東京インテリジェンス・ラボの金井健司氏は「まだ具体的な戦略は見えないが、株価を気にせず大型投資に踏み切りやすくなり、物流系のシステムを強化していくことが考えられる」と指摘しています。

増加する企業の非公開化と背景

豊田自動織機は株式市場から姿を消すことになりますが、ほかにも企業の株式非公開化は増加しています。東京証券取引所によると、2025年の経営陣による自社株買収(MBO)や支配株主による完全子会社化の開示件数は65件と前年(39件)の1.5倍超に急増しました。

企業の非公開化などに詳しい、運用会社スパークス・アセット・マネジメントの川部正隆氏は「非公開化を検討する企業は、今後も継続的に増えていくだろう」と分析しています。

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背景には、東証が2023年3月に、プライム市場やスタンダード市場の企業に「資本コストや株価を意識した経営」を要請したことや、経済産業省が同年、買収を提案された場合、合理的な内容に対しては「真摯な検討」を行うべきだとの指針を策定したことがあります。

また、豊田自動織機や太平洋工業のように、東海地方の企業の非公開化案件でも、物言う株主(アクティビスト)の関与が目立っています。足元では円安が進行し、海外勢から見た日本株の割安感が増しているとみられます。川部氏は、「日頃から、情報の開示や確度の高い業績予想など、地道に投資家との対話を行うことが、信頼関係の構築につながる」と述べています。