日産自動車、2029年にAIを駆動する次世代車の投入を計画
日産自動車は、2029年をめどに人工知能(AI)を本格的に活用した次世代車を市場に投入する方針を明らかにした。同社の次世代車開発を担当する吉沢隆執行職が朝日新聞の取材に応じ、詳細な戦略を語った。この計画は、自動車業界における技術革新の新たな段階を示すものとして注目を集めている。
ソフトウェアが性能を左右する次世代車「SDV」
この次世代車は、「ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)」と呼ばれる仕組みを採用する。無線通信を通じて車載ソフトウェアを定期的に更新し、購入後も継続的に性能を向上させることが可能となる。車両の「頭脳」に相当する基本ソフト(OS)の開発が成功のカギを握っており、日産は自社でのOS開発を急ピッチで進めている。
吉沢氏は、「車両やドライバー固有のデータを適切に管理し、必要な情報をAIに提供することで、AIがそれを理解し、新たな価値を創出するようになる」と説明した。具体的には、家族からの買い物依頼が通信アプリで届いた際、会話の内容を分析したAIが経由地を自動設定し、自動運転機能でその場所に立ち寄るといった機能を想定している。
自社開発OSによるAI技術の本格導入
日産は、2029年頃までに自社開発のOSにAI技術を統合し、車両に搭載する計画だ。これにより、従来のハードウェア中心の自動車から、ソフトウェアが主導する次世代モビリティへの転換を図る。SDVの概念は、車の価値をソフトウェアの進化によって定義し直すもので、業界全体の競争力を左右する重要な要素となっている。
吉沢氏はさらに、「AIが運転中にコーヒーを注文するような日常的な利便性も視野に入れている」と述べ、ユーザー体験の向上に重点を置いていることを強調した。この取り組みは、自動車の単なる移動手段から、生活の一部として統合されるスマートデバイスへの進化を意味する。
開発加速の背景と業界動向
日産が次世代車の開発を急ぐ背景には、ソフトウェアが車両性能を決定づける時代への移行がある。競合他社も同様の動きを見せており、トヨタ自動車は新型RAV4をSDVの先駆けとして位置づけ、ホンダもEVシフトに伴う戦略調整を進めている。また、日産は米ウーバーと自動運転タクシーの試験運行を都内で開始するなど、協業を通じた技術実証にも注力している。
経済部の中村建太記者は、自動車業界がAIやソフトウェア技術を巡る激しい競争に直面していると指摘。日産の今回の発表は、生き残りをかけた戦略の一環として、業界全体に影響を与える可能性が高いと分析している。
日産自動車の2029年次世代車投入計画は、AIと自社開発OSを軸に、自動車の未来像を再定義する挑戦だ。成功すれば、モビリティ産業に新たな基準をもたらすことになる。



