八王子のアパート6畳間で酒造り、英誌主催品評会で金賞を連続受賞
八王子のアパート6畳間で酒造り、英誌品評会で金賞連続受賞

八王子のアパートで造った酒が英誌で金賞

東京都八王子市のアパートの一室で造られたリキュールとジンが、英国の専門誌「スピリッツ・ビジネス」が主催する品評会で相次いで金賞を受賞した。手がけたのは、市内のバーテンダー島村悟さん(51)。新型コロナ禍でカウンターに立てなかった時期に酒造りに挑むことを決め、わずか2年での快挙となった。

受賞酒の詳細

八王子産の桑の実とホップにハーブを加えて漬け込んだリキュール「マルベリー&ホップス28%」は昨年5月、アジア部門で金賞を受賞。桑の実を原料にする珍しさに加え、ホップをあえて煮詰めて苦みを演出したことで「難解だが心地よい」と評された。

高尾山に降りる霧を名に冠したクラフトジン「翠靄(すいあい)」は昨年12月、ジン部門で金賞を受賞。ウイスキーの香り付けの手法を応用し、泥炭の煙で原料のベリーをいぶすことで、果実の硬い皮が壊れて独特の風味が生まれた。「多くの要素が詰まっていながらバランスが良い」と好評を博した。

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酒造所は6畳間

ともに、JR八王子駅から徒歩約10分のアパートの6畳間で誕生した。蒸留にはIHコンロを使い、100リットルのステンレスタンクを並べて酒にスパイスの風味を染み込ませる。酒税法や消防法に基づく許可も得た、即席の酒造所だ。

バーテンダーから酒造りへ

島村さんは八王子市出身。帝京大在学中に市内のバーでアルバイトを始め、28歳で独立して自らの店を構えた。新型コロナ禍に見舞われた2020年3月、都知事の会見で「接待を伴う飲食店」の一つとしてバーが名指しされ、客足が途絶えた。

その後に続く自粛要請にも全て応じながら、「自分が大学生から続けてきた仕事を否定され、先輩たちが築いてきたバーの社会的信用が損なわれた」との思いが膨らんだ。「カウンターの中にいるだけではいけない」と準備を重ね、23年に酒造りに乗り出した。

今後の展望

連続受賞で全国からの注目も集まるが、「3年間は八王子の『地酒』として浸透することを目指したい」と、主な流通を市内と周辺に絞っている。商品を置いてくれる地場の大手スーパーなどには、自ら車を走らせて納品する。

逆境を機に、酒を評価するバーテンダーの立場と、評価される造り手の立場とを両立することになった。「造り手としては不安もある」と笑いつつ、「酒造所があるからバーカウンターに立ち、バーカウンターがあるから酒造所に戻ってくる。そういう風に互いの立場を高め合っていきたい」と将来を見据えている。

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