鉄道高架下を「大人の秘密基地」に、賃貸ガレージハウス登場 各社が新たな収益源として活用に本腰
鉄道高架下を「大人の秘密基地」に、賃貸ガレージハウス登場

鉄道高架下の有効活用に各社が力を入れている。高架下ならではの特徴を生かした取り組みや駅からのアクセスのよさも相まって、賃貸物件やバーベキュー場と用途も多様化。少子高齢化などで鉄道利用者が伸び悩む中、これまで「暗い」「うるさい」というイメージで語られがちだった高架下が、新たな収益源として見直されている。

「大人の秘密基地」のような賃貸ガレージハウス

神戸市東灘区の阪神電鉄魚崎-青木駅間の高架下。今年7月、ここに新たに完成したのが賃貸ガレージハウス「GARAIL(ガレール)神戸東灘」だ。2階建ての1階部分には広いガレージがあり、車やバイクを格納できる。階段を上がると、キッチンやトイレを備えた居住空間が広がる。まるで大人の秘密基地のようなたたずまいだ。

賃料は1台ガレージタイプで24万円から。線路と建物の間に空間を設け、騒音や振動を極力抑えているという。確かに記者が取材している間も音や揺れはほとんど気にならなかった。企画に携わった阪急阪神不動産(大阪市北区)の担当者は「車好きの方など、新たな顧客の創出につなげたい」と意気込む。

バーベキュー場やライブハウスも、高架下活用が多様化

同じ神戸市内のJR神戸駅(同市中央区)では約3年前、駅から徒歩3分ほどの高架下に、バーベキューや日帰りキャンプを体験できる施設「神戸D51PARK」がオープン。テントやバーベキューセットが用意され、手軽にキャンプ気分を味わえる。アクセスのよさに加え、日差しや雨を気にしなくていいのが魅力だという。同僚と訪れた大阪市港区の自営業、金沢宏美さん(44)は「天候を気にしなくていいし、電車の音もいい味を出している」と満喫している様子だった。

南海電鉄は約3年前、難波駅近くの高架下に2つのライブハウスを誘致。道頓堀などの観光地がある駅北側だけでなく、南側にも人の流れをつくることなどが狙いで、新たなカルチャーの発信拠点となることを目指すという。JR秋葉原駅(東京都千代田区)近くには令和元年、2階建てのホテルが開業した。高架下に宿泊するという非日常的な体験ができることも利用客に受けているが、ホテルを含む高架下の商業施設を運営するジェイアール東日本都市開発の担当者は「高架下の空間を、日々の生活の中で使ってもらえる味わい豊かな場所としていきたい」と展望を語った。

「残された一等地」として再注目、背景に高架化の歴史

国内における線路高架化の歴史は古く、明治末期には東京駅開業に向けて沿線でレンガ造りの高架橋が建設されるなどした。戦後はいわゆる「開かずの踏切」による交通渋滞の解消や、線路による街の分断の回避といった目的で、高度経済成長期を中心に各地で高架化が進められた。

国土交通省によると、鉄道を高架・地下化して道路と連続して交差させる「連続立体交差事業制度」が昭和43年度に創設されてから、これまで全国約160地区でおよそ1700カ所の踏切が撤去され、多くが高架化された。その過程で地上にスペースができ、飲食店や雑貨店などがひしめくようになったが、激しい騒音や振動、日差しが遮られることによるマイナスイメージがついて回った。このため、駅から距離が離れた場所では、駐車場や倉庫として使用されるか、空き地となるケースが多かった。

しかし近年、主要都市の土地が出尽くすなかで「残された一等地」として高架下が再注目されるように。工法に工夫を加えたり、高架下の環境を逆手に取った発想で魅力的な空間に変えたりと、活用の動きが加速した。鉄道各社も高架下ビジネスに本腰を入れる。