浜岡原発データ不正問題 元規制委員が証言する審査の実態
中部電力が浜岡原発(静岡県)で想定する最大の地震の揺れ「基準地震動」に関連するデータを不正に操作し、過小評価した疑いについて、調査が継続している。この問題に関連し、当時の審査を担当していた元原子力規制委員の石渡明氏が、審査の詳細な状況や不正に対する見解を明らかにした。
不正発覚への驚きと不明確な実態
――今回の不正について、どのように感じていますか。
石渡氏は「どれぐらいの規模でデータが改ざんされたのか、具体的な数値が不明です。1割から3割程度の操作であれば、審査過程で調整が行われるケースもあります。しかし、2倍や3倍もの大幅なごまかしがあったのかどうか、その点が極めて重要です」と述べた。さらに、「驚きは感じましたが、詳細が不明確なため、適切な受け止め方が難しい状況です」と付け加えた。
基準地震動審査のプロセスと課題
――基準地震動に関する審査は、どのように進められましたか。
石渡氏によれば、浜岡原発の審査では、申請書に記載された1200ガル(揺れの加速度を示す単位)という数値を了承したという。この決定は、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や東北電力女川原発(宮城県)と同様の扱いであり、特別な対応ではなかったと説明した。
審査では、現場の地質状況を詳細に検討。南海トラフの主要断層だけでなく、敷地に向かって延びる「分岐断層」や、発電所付近の内陸活断層についても、連動計算を要求した。その結果、地震動の最大数値は1070ガルから1173ガルに修正された。
計算の不透明性と裁量の余地
――申請値の1200ガルに近い数値になりましたが。
「中部電力が意図的にその数値を選んだ可能性はありますが、彼らの意図はわかりません」と石渡氏は指摘。さらに、「地震の波の重ね方によって結果が変動し、計算の細かい調整が影響するため、審査側が詳細まで検証することは困難でした。数値だけを見て『完全に不適切』と判断することはできません」と述べた。
シミュレーションでは、仮定の設定次第で計算結果が大きくばらつくという。石渡氏は「この部分がブラックボックス化しており、裁量によって結果が容易に操作可能な状態でした」と強調。今回の不正調査では、数千もの乱数生成が行われた可能性にも言及し、計算プロセスの複雑さと不透明性を浮き彫りにした。
原子力規制の課題と今後の展望
この問題は、原子力規制における審査プロセスの信頼性に重大な疑問を投げかけている。石渡氏の証言は、データの透明性向上と、独立した検証体制の強化が急務であることを示唆している。今後、規制当局と電力会社双方が、より厳格な監視と説明責任を果たすことが求められるだろう。



