高市政権が掲げる「強い経済」の実現に向けて、戦略分野の一つに位置づけられる航空・宇宙産業。民間航空機やロケット開発などへの優先的な支援が予定されているが、政府自身が認めるように、開発に不可欠な試験設備の老朽化が進行しており、現場では将来への懸念が広がっている。
政府の成長戦略と設備老朽化の矛盾
今年3月の政府の成長戦略会議では、官民投資ロードマップの素案が提示された。航空・宇宙産業のうち、民間航空機については2050年に年間約6兆円規模以上の市場獲得を目指す。特に、客室の通路が1本で胴体幅が狭く、主に中・短距離路線で運用される次期単通路機について、2050年までに約8千機の製造、エンジンは世界シェア4割の獲得を目標に掲げている。
しかし、その一方で課題として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究機関が保有する試験・実証インフラ基盤の不足や老朽化が挙げられ、必要な試験の実施が限定的になる懸念が示された。これらの設備への投資もロードマップに盛り込まれているが、具体的な額や時期はまだ検討中だ。
現場の声:研究者が修理に追われる
「研究者が研究ではなく、設備の老朽化対策に追われていく」――航空機やロケットの開発に関わるJAXA調布航空宇宙センター(東京都調布市)の担当者はこう漏らす。
例えば、航空機やロケットの空力性能を評価するために不可欠な風洞設備。同センターが所有する風洞の内部では、試験用の模型に風を当ててデータを収集するが、設備の老朽化により水漏れが頻発し、修理に時間を取られるケースが増えているという。
こうした状況は、研究開発の効率を著しく低下させている。本来であれば最先端の研究に注ぐべき時間と労力が、設備の維持管理に費やされているのが実態だ。
政府の投資は不透明
政府は成長戦略の一環として、航空宇宙分野への投資を掲げるが、具体的な設備更新の計画は示されていない。現場からは「設備が古すぎて、世界の競争に遅れを取るのではないか」との懸念が強まっている。
航空宇宙産業は、安全保障や経済成長の観点からも重要な分野とされる。しかし、基盤となる試験設備の老朽化が放置されれば、長期的な競争力の低下は避けられない。政府には早急な対策が求められる。



