静岡県のエネルギー情勢が大きな転換点を迎えている。浜岡原発(御前崎市)は完全停止から15年が経過し、データ不正問題により再稼働への道筋が不透明となった。一方、再生可能エネルギーの普及も順風満帆とは言えず、日本のエネルギー政策の方向性が改めて問われている。
浜名湖畔の営農型太陽光発電
浜松市中央区の「ハマナコベリーズファーム」では、高さ3.5メートルの台の上に17列の太陽光パネルが設置され、その下でブルーベリーが栽培されている。パネルの隙間から差し込む光が13アールの農地を照らし、4月下旬には大粒の実が色づき始めていた。園長の三川俊徳さん(75)は「程良い日陰がむしろ生育の良さにつながっている」と語る。この農園では、発電した電力を固定価格買い取り制度(FIT)で売却し、運営資金に充てている。
このように農業と発電を両立させる手法は「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」と呼ばれ、再エネ拡大の一手として注目されている。農林水産省によると、制度化された2013年以降、全国で普及が進み、2023年度までの累計件数は6137件、農地面積は1361ヘクタールに達した。
浜松市の太陽光発電の現状
浜松市では、東日本大震災後、豊富な日射量を活かして太陽光発電の導入が進んだ。養鰻池の跡地や住宅・工場の屋上への設置が増えたが、適地の減少やFITの売電価格下落により、増加ペースは鈍化している。市カーボンニュートラル推進課の原田憲治課長は「市内には利用可能な農地が多く、営農型太陽光への期待は大きい」と話す。しかし、農業ノウハウのない事業者が売電目的で参入し、耕作がおろそかになる不適切事例も各地で発生している。また、農家が自力で導入するには初期費用が高く、本格的な普及には至っていない。
洋上風力発電の課題
太陽光以外の再エネも課題を抱える。政府が「切り札」と位置づける洋上風力発電は、建設コストの上昇や漁業関係者との調整が障壁となっている。三菱商事や中部電力の子会社で構成する企業連合は2024年8月、秋田県と千葉県沖での計画から撤退した。静岡県内では、遠州灘沖での導入検討が始まったばかりだ。
エネルギー目標達成への道筋
政府は2024年に策定した第7次エネルギー基本計画で、2040年度の電源構成における再エネ比率を40~50%程度に設定した。経済産業省によると、2024年度の再エネ比率は23.1%で、最低でも約1.7倍に増やす必要がある。再エネ発電量は震災直後の2011年度と比べて2倍以上になったが、近年は微増にとどまる。国際大学の橘川武郎学長(エネルギー産業論)は「目標達成のカギは太陽光の伸びしろ次第であり、営農型発電への支援策が不可欠だ。政府は真剣に取り組むべきだ」と指摘する。
問われるエネルギー政策の方向性
中東への原油依存というリスクを抱える日本。再エネの普及に行き詰まり感が見える一方、浜岡原発の再稼働は白紙となった。エネルギー政策の方向性を決めるのは国民一人ひとりの判断であり、今後も議論が続くことになる。
(この連載は曽根智貴が担当しました)



